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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
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 咆号か、
 大気を震わす声音は、空全域に響いていく。
 おかしなことだ。存在自体が音であるのに。其にとって同胞を吐き出しているようなものなのに。まるで人間の様で、おかしい。
 其は"生きる音"
 人間と比べ上位級生命体である、同種以外には不可視の存在。
 同種――という表現は、些か語弊があるかもしれん。
 理性に対する本能のように、同一とも異種ともとれるからだ。
 なぜなら其は、上位級生命体における社会で迫害を受けた種であるから。
 其は、忌わしき欲望の化身。
 天使が言うには、怨災だと。
 その一匹狼は疾駆していた。
 摩天楼で。人の住まう異郷で。
 故に人は歓迎する。
 手痛いかどうかは、今から解る――

「スーパーヒーロータイム突入!」

 舞踏会のようなピアノ曲が響き、
 変身ツール"騎士の牝馬ナイトメーア"の煌めき、
 その後、此は一匹狼にスッと対峙した。
 中華とは程遠いが、お団子頭である子。
 服は良い意味でいうなら身軽、悪い意味でいうなら男を誘う短さしかないようなシロモノだ。意匠やリボン、レース、配色の凝り具合はとても絶妙であるが。
 手に持つ専用武器"グラディウス"は聖柄の快刀。音楽の下でのみ、気刃で切りつけることが可能である。
 ここまでのは総て、其の一匹狼の知識だ。なぜそこまで知っているのか、それは初対面ではないためである。
「五度目の邂逅、ありがたく思う。グラディアートル・サウンドが女子おなご
 其はグヒヒと笑う。
「解せないな。逃げる側が追う側に言う言葉とは、とうてい思えない。バーニングレオ・ディオスが……なんといえばいいのかな。ええと、ごめん、良い物が思い浮かばないよ」
 此は人差し指を唇に当てて、眉をひそめた。なんというか、場違いだ。
「雄とでも呼称してくれればいい。まあ、我に性別などは無いが」
「――無理だね。君は、雄と呼ぶには些か貧弱すぎる」
 そして発したその言葉に応じるように、其が顔を狂ったようにゆがめる。
 同時、此は剣を振るう。
 型は、剣先を敵へ向け自分は仁王立ちするというもの。
 前述したとおり、この剣は気を流し込むか纏うかして構成できる刃を行使する前提である。その意図するところは"間無まなしの形状"である。つまり総ての有。そのイメージから生まれるスキルは"収縮自在の刀身"
 変則的、ユニーク。そんな評価で済ますには惜しい。なぜならこのスキルは、侍が有する唯一の欠点の削除を意味するのだから。
 今、示される。
「【モノ・ラグナ】」
 剣先から残像、いや有幻覚の類が、大気を凝縮するように生まれた。
 黄昏色の馬鹿でかい刀身。それに似合う大きさの鍔と柄。全体像はビルほどあり、纏う風圧も入れれば攻撃範囲はさらに上。
 その圧倒的な一刀を前に、しかし敵はヘラヘラ笑っている。
「我は、しょせん偵察なのだ。故に我は、我を此処へ使わせた主にこう伝えることになるだろう」
 炸裂する一刀。世界の中心にも届きそうな丈を、自由落下に任せるのみで最大限生かす。横に薙げば鈍重になってしまう斬撃だが、この手法であれば目まぐるしい早さで加速する。
「……この世界の守護者は、あまりにも弱いやつが一匹いるだけだったと」
 しかし――敵、バーニングレオ・ディオスは無傷のまま、帰還を果たす。
 残された者の極大な鉄槌は、ピタリと止まった。そして蜃気楼が掻き消えるように、気刃の展開を終了する。
 その最中、世界中に響いていたピアノ曲は唐突にその踊りを止める。
「弱いやつ、か。当然だね」
 残された剣闘士グラディアートルは、口調に苦渋を滲ませぬ。
 むしろ、次の一言には喜色が窺える。
「一匹いるだけだった、か。素晴らしい観測をしてくれたものだね?」
「ですね~♪」
 剣闘士の隣に降り立ったのは、♪天使エンジェルという先ほどのピアノ曲の演奏者である。
 その真っ白い瞳は無邪気そのもの。丸々下ろされている艶やかなほんのり桜色の髪はクリクリと癖が付いていて、両方とも彼女のウキウキとした笑顔をより愛くるしく魅せる。
「さて。予定通り、最低限の情報で奴を帰らせることができたわけだが……これからが忙しいよ」
「ですね。でも、神姫ブリュンヒルデさんの頭ん中では大体の目星が付いてる、とのことでしたっけ」
 剣闘士のかざす剣は世界にとって、一縷の望み。


戦友ともは、すぐにでも集えるよ」


 これより、数筋が束となる。故に世界は救われるであろう。


14.


 仙童せんどう 神姫ブリュンヒルデは高校生である。
 ちなみに、前章で音集めに徹していた超次元アクションのあれとは兼業している。
 さて。今日は青き空だ。
 太陽が燦々さんさんと輝いている。
 むき出しの肌がこの場にあれば、堪えきれないほどの痛みを覚えるだろう。それほどに強い日差しが、照っている。
「ゴンザレス」
 そして、ビーチにあるような背もたれの傾斜がゆるいイスに腰掛け、彼女ブリュンヒルデが肩を抱くように自身のむき出しの肌を撫でているのは、少しでも痛みを和らげるためだ。
 彼女は、こんがり小麦色とは程遠い肌の色をしている。赤くただれるよりはまだマシだが、これからさらにしばらく日光浴を続けるのであれば時機にそうなる。
「水をくれ」
 故に、対策は発動する。
 対策は降り注ぐ。
 サラサラ、否、どばどば。雨というよりは滝のように、潤いは多量に彼女へと投下される。
 反射的に目を閉じた彼女は、全身にその潤いを浴びた。一気に湿気を帯びた髪をうざったそうに顔を振って払いのけ、ささやかな水しぶきを飛ばす。
 目覚めたように、彼女は座ったままノビをした。うぅっと気持ち良さげに声を出す。
 その腰つきには、汗と先ほどの水が入り混じって――上半身に付着した水滴も、流れ込んできているからか――ぬちゃぬちゃとしている。
 正反対にいやらしさの欠片もない美しい表情が、呪わしいくらいに魅力的になる。
「人間とは、温度差を愛するものだな。素晴らしい本能だよこれは。夏にかき氷、冬に鍋。寒い時にラーメン、暑い時にそーめん。うん、最高だ」
 傍にいる巨男きょじんは、魔女の痴態ちょうはつを近距離で見せ付けられたというのに平然としている。だが性欲が無いわけではない。慣れすぎているというだけである。
 彼女の傍にいることに。彼女の魅力に。彼女の体を味わう・・・・・・・・ということに・・・・・・
 耐性があろうともなかろうとも、巨男には、そして彼女にも関係はない。
「なんだ、したくなったか?」
 小さな媚声をひとつ漏らす。彼女の目は巨男の股間を舐め回すように見つめている。性欲が無いわけではないから、巨男の身体は正常な反応を示したわけだ。
 巨男がコクリと頷いた。
 途端にスイッチが切り替わるように愉悦に満たされた彼女の表情。
 目は陶酔し、口は半開きのまま、涎は垂れ放題で、故に飾り気の無い淫乱さに満ちている。
 最高に美しい。美しくないはずがない。優美ではないのだとしても、彼女が美であることは誰もが認める。
「いいよ。私をあなたのモノにして……」


 彼女は女神の顔ももつ女だ。剣を以てして熟成された幻想曲を幾つも幾つも即興し、やがては真の神すら殺すだろうおんな。芽といえどその強さは鬼を凌ぎ、模造の神なら五秒と持たずに朽ち果てることは必至。言い換えるなら、一歩ほど手前の真の神。
 その彼女が、独壇場を譲るなどというだけでなく、巨男に(あらゆるかくどから)蹂躙される(せめられる)ことを甘んじて受け入れるなど、そんな幼い売春婦のマネなどしては侮蔑を招く。天使なら堕天、捕虜なら屈服。
 今の彼女は、崇高されるには妖花すぎて、天光アーリアルを人に導くにはあまりにも牝の臭いがツンと鼻につく。
 だが何の後ろめたさも感じていないように、彼女は雄をこちらへこちらへと手招きする。
 閑話休題、牝の喘ぎ声が響き始めた此処は彼女たちの通う学校の屋上である。陽はまだ高く、人は密集している。


 好きな男を自らの魅力で篭絡し、力づくで犯させる。つまり、恋人の前でなら、女は娼婦のように淫らになる事が許されるわけだ。
 だが彼女にとって、巨男ゴンザレスは恋人にカテゴライズされない。巨男にとってもそうだ。故にセックスフレンドであると暗黙の了解がとられている。それ以外にちょうど良い単語を、二人は知っていなかったから。
 高校生らしくないその関係とは別に、彼女には、高校生らしくも、初恋の人がいる。
神姫ヒルデっ!」
 放課後であるため、大いなる一つの人波が校舎から校門へ向かっている。その人波に逆行するように、彼は仙童神姫の元へとことこと歩み寄っていく。
 愛称を弾んだ声に呼ばれた瞬間、無感情だった神姫はニッコリと微笑んだ。
 もちろんだが、高校生らしい服装をちゃんと纏っている。
「やあ、慎司。今日も可愛らしいね」
 慎司という彼は、女の子っぽい。
 別に、スカートを穿いているわけではない。それでもボーイッシュと見て取れるような、中性的な顔立ちをしているのだ。
 名前の読み方のような男っぽさ、男特有の汗くささもない。
「男にそれは死語ですぜー!」
「君は"男の"という新語を体現しすぎていて、毒だ」
 神姫は目眩を堪えるように、己の額を押さえた。表情は満足げである。"もう死んでもいい……"というような出来事に巡り合った直後のような極限の満足で満たされている。
 余計に慎司を煽ってしまうのは承知の上である。
「もうもうッ、ゴンさんとサボって屋上で昼寝してるようなヒルデなんか、もう板書ノートを貸してやんないから!」
 巨男ゴンザレスのあだ名と、慎司の思いこんだ真実。
 二つを聞いても神姫は眉一つ顰めず、笑顔も崩さない。
 ひっそりと行った情事に、何の後ろめたさも感じていないように。
「可愛いね」
「もうもうーー!」
 二度、三度とおちょくられ、慎司はキレた。
 彼の怒りは頂点に達し、神姫をポコポコ殴り始める。
 神姫は先ほどまでよりももっと楽しげに、クスクスと笑う。だが彼が殴る箇所には、服に覆われていて普段は見えないが、傷が残っている。
 胸の下に、打撲の跡や切り傷。そのうち、彼の非力な殴打にも痛みを放つ傷がある。
 その傷は、今は此処に居ない其処の住人が来襲して来たためにできたものである。
 真に近き女神が傷を負う。つまり彼女より強い敵が、現れたのだ。
 これまでに彼女より強い敵だった者は、騎神(The killer)ぐらいである。けれど今回は決定的に異なる事がある。
 それは、今回の新手は組織であって単体ではないこと。そして、彼女に傷を負わせた者は其処の概念において力量が最低級である・・・・・・・・・ということ。
 一番強い敵から傷を受けたなら、この程度では済まない。傷痕として考えるなら、それは彼女を丸々飲み込んでこの世から消し去ってしまう。
 世界は彼女一人では護れなくなっていた。

 

 

 
 
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