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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
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 神の気まぐれか、黄泉は黒曜への援軍として流れ着いた。
「大丈夫かい?」
「ええ……」
 二人が一言二言交わす。
 その間、金剛力士は神姫の方を向いて硬直していた。
 精神線で操作される"箱"が動きを止めているため、放心しているとわかる。
 隙だ、と黒曜は思った。そして動いた。
「ッ!!」
 高速の突き。衝撃波を伴うから、本来なら間合いに無い"箱"を抉ることも可能である。
 さらにその衝撃波は魔力が付与されている。その黒い旋風は、実体の斬撃より遥かに業物と化している。黒曜としては、"箱"を破壊する威力が期待できる程に良い。
 だが、数瞬の衝突後に、"箱"の強度に負けて黒曜の衝撃波は掻き消されてしまった。
 それを合図に戦闘は再開される。
 "箱"の繰り手が韋駄天のように素早く距離を詰め、金剛力を振るい込む。だが相手に選んだのは黄泉だ。彼女にとって殴撃おうげきは斬撃同様に無効化がしやすい類である。
 金剛力士の攻撃が無為になったと同時に、黒曜は彼の背後を取り斬撃を飛ばす。だが彼の巨躯は鉄壁のように堅く、斬撃はダメージを通せなかった。
 次に、飛び散った黄泉の粒子が離れた位置で集束し、闇を放つ。斬撃と違い、闇は蝕む攻撃だ。闇ならば敵が鉄壁であろうと、問題では無くなる。
 だが鉄壁が通用せずとも、相殺ならまだ手がある。
 金剛力が大気に向かって振るわれたために、その風は吹き抜ける。闇に立ち向かう一柱の剛風。それらは衝突すると、剛風は闇を、闇の這いずり回る大気ごと別の場所へ流すことで防御した。
 ――そんな金剛力、ほんとうにたかが腕力なのか。
 冷静に推測してしまったために、黄泉は格の違いを思い知ってしまった。
 その戦慄きを貪ったかのように、優勢は取り返しのつかないレベルまで一方へ傾く。
 そう。悪あがきもそこまでで、運命のコマが一つ前進する。

 抗えない実力差に裏付けられたもう一つの処刑場が、今その幕を下ろした。


 黄泉の出所たる、業火に囲まれた、大空の殺戮劇。
「……格闘家にでも、転職するつもりか」
 外壁が熱い。
 内側は冷たい。刃を首元に押し当てられたような寒気がする。
「いいや、私は今でも剣闘士だよ」
 だが三者のうち、一人は刃を持ち合わせてはいない。
 だのに、その者は刃を持っていると言う。
 己の殺気が刃だと豪語する、自惚れ者の台詞か。
 否、
「ここに、あるよ」
 神姫は自らの胸元を指差した。
 白く柔らな肉の塊二つ。服を押し上げるそれは、半分が生の状態で見えていた。
 膨らみが大きすぎるため、その服では全てを隠しきれないのだ。
 全体的に細い体付きであるにも関わらず、だ。だが、背丈が長い分だけチョコより人間らしい。
「とりあえず、出して見せた方がはやいかな」
 神姫が言うと同時のことだ。
 その花が咲いたのは。
 その花の色は、黄昏。
 玻璃はりのような六角柱状の花びらが多数、全方位に向かって成長する。成長し続ける。
 黒の神将、ジェネラル・ディオスに迫り来る花びらは、言い換えれば神姫が剣山を突き込むようなものだ。剣ひとつひとつの間に入り込める隙など、用意されていない。
 剣山と違うのは、避けられる攻撃範囲めんをしていない事だ。どこまで横へいっても、全方位に伸びているのだから、剣山は尽きることがない。必中なのである。
 そして、神将はさらに思い知ることとなる。
 その鬼鎧きがいで防げぬ刃が、目の前にあると。
 そのまま、花は地上に達するほど開花していきピタッと止まった。
 どちらにせよ、花が地表を抉ることはないのだが。音体以外が催眠され、慣性状態にあるこの天使音楽有効範囲舞踏会では。
「……すごいのね」
「君の技だったものが、ヒントだよ」
 チョコの吐息に、神姫の声が応える。
「グラディウスごと、それの気刃機構を吸収した私は、気刃を至る所から構築できる。だから、針鼠のように出してみた。結構、強そうだろう?」
 強いも何も、花の伸びる速度が音にしては遅いが無敵に近い技だ。
 だのに、チョコは首を横へ振った。
「甘いわね。ほら、くるわよ」
 チョコが予想し、実際に迫り来る、黄昏の花の天敵たる脅威。
 チョコが言うには、固体ではない生物のそれら・・・がまさに天敵であるのだ。
「【ハイドロネオドラゴネス】」
 それらとは水の主と、土の主。それらは斬撃を喰らおうとも、細かなものになるだけだ。斬撃では、決して死ぬことがない。
 特に水は、花びらから内部ブリュンヒルデのもとへ、水蒸気レベルに自ら分裂することによって容易く侵入できる。
 それらを破るには、、瞳の魔力死へのチャームのような『丸ごと消失させる手段』が必要不可欠である。神姫の気刃では、願っても叶わぬ――
「甘くなどない。吸収したのだから、気刃機構は自由自在だ」
 だが、花でなければどうだろうか。
 巨人が担うべき刃渡りすら模倣できる気刃で、灰塵すら消し飛ばしたならば。一縷の望み、否、確信をもって神姫は動き出した。
 まず初めに、花が散った。
 最高防護にして必中必殺の攻撃のように思われた第一にも欠点があると、その儚さを語るように終わる。それを継いで、第二が産まれる。
「【ジ・ラグナ】」
 バベル二柱ふたばしらが世界に突き込まれた。
 その衝撃に竜巻が起こる。同等に二つ、互いに喰らいあって同化し、それを機に膨張して世界へ吹き抜けた。
 ざわめく髪のうち、視界を塞いできて邪魔な前髪だけを片手で押さえる神姫。
 その彼女の背後に、猛威は在った。
「――ッ」
 猛威は、猶予を与えずに牙を剥いたつもりだった。
 だがその牙は妨げられ、ギィンと音をたてた。
 神姫は奇襲の方へ容易く振り向き、捉えきれぬ速度で予備動作も終えた――否、
 牙を妨げた得物は、彼女の身体から生えた・・・気刃であった。振り向くことも、予備動作も、これならば必要としない。
「つくづく、なんでもアリなのだな。その剣は」
「私は神なのだよ? これくらいの自在さはないと、ねぇ」
 彼女は炎の百獣王を見下すように、薄く微笑んだ。
 そして、黄昏色の針鼠の衣を纏う。針は花のときと違い鎌のような不自然な曲がり方をして、奇襲して来た敵のみに殺到する。
 だが、どれもがその一方向に向かえたわけではない。どこまでも伸びていくその一団から、あらぬ方向へと脱する刃がいくつもあった。まるで木の幹に繋がる枝のように。百獣王が抗っている証拠である。
 実際に、殺到する刃の群は、ぐんぐん伸びていくことはまだ続けているが何も貫けていない。勢いで勝っているだけである。百獣王は、フンと鼻で笑った。
 この程度か、と。
 ――あと少し待てば、そんな愚考を晒さずに済んだだろうに。
 思った直後、彼の背中にゴリッと何かが押し付けられた。
 その何かとは、穴の大きなドーナッツのような。立体的に見れば、筒としか表現できないようなもの。
 その何かとは"器筒"
 その瞬間、王の死の運命が定まった。トリガーが引かれた後という、間近の未来が。
 王は神の怒りに屠られる。
 さらには、楯状の巨氷か、挙上した大木の幹かと見間違う、剣の女神の成した群が、その一筋の極光に圧力をかけられて潰えた。
 雪のように降りしきる黄昏の結晶は、きらきらと輝いていた。
「私の力を見誤っていなければ、こんな惨事にはならなかったかもしれないね――あのときのあれでは、一世代前の全力状態にも及ばなかったんだよ。バーニングレオ・ディオス」
 そして、神姫が手を挙げる。
 なぜ名を知っているのか、どのようにして知ったのか、生きていたなら彼は尋ねていただろう。だが彼は跡形も無い。
「……さあ、行こうか」
 神姫は身を翻し、戦友へ視線を向ける。機を待っていたのか、彼女が振り向くと同時に杖の先端オーブを近づけ回復を施す少女。
 ありがと、と囁き、神姫は少女の後ろ髪を撫でた。
 そして、ジトッとした目つきで"器筒"を構えた方の少女を睨む。
「この掠り傷は、敵から受けた負傷ではないんだがね。どうして傷ついてしまったんだろう? どこかの誰かさんが、私のいる方向へレーザーを最大出力でぶっ放した所為かな?」
「あ、あはは~」
 苦笑のたてた音は、響き渡る音楽のフィナーレを妨げぬていどの小ささに絞られている。
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