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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁
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「この家のどこかに、エロ本を隠した」
と言って、音姉を血眼にさせたのがついさっき。きっと家中をくまなく探してくれることだろう。掃除をする手間が省けそうで、計画通りだ。
騒がしい音に背を向けて、朝食をとりにリビングへ出る。
「お姉ちゃんをいじめちゃって……兄さんは、少し自重すべきです」
「知らなかったのか。アイツはいじめられるのが好きなんだ」
ペラペラと漏れ出す嘘。本人にバレたら死罪だが、そんなことで嘘吐きをやめるほど俺はチキンでない。
まあ、逃げ出しはするだろうが。
「由夢。お茶」
「あ、私の分も淹れてね」
恐るべし朝倉妹。だが、切り返しで死すのでは兄の威厳が崩れてしまう。思考回路が火花を散らす。口を、開く。
「お前の汁を飲ませてくれ」
卓袱台をひっくり返された。仕方なく、台所へ退散する。兄の威厳がどうこうと言っていたが、どっちにしても丸つぶれとなってしまった。というか言わないほうが良かった気がする。
「あ、義之くん」
「さくらさん。お茶淹れますけど、一口どうです?」
「お菓子はマンゴー? イヤン、義之くんのえっち♪」
「カラシを入れますね」
泣きつかれた。殺生だよもっと情けをもってよボクはおなごだよ、と喚かれた。
ちょっとだけ勝利の笑み。桜餅を口に投げ込んで和解。
ニコニコしてさくらさんが去っていくのを見届けて、ふと気づいた。
「……カロリー消費した分だけ、俺の負けじゃね?」
苦虫を噛み潰す顔をした。さくらさんの茶飲みに呪いがかかってくれることを切に願う。
「よっ」(←爽やかな笑顔で
汗だくになって卓袱台に突っ伏していた音姫に、己の茶飲みを差し出す。由夢の前にも置き、さくらさんにアンダースローで投げ込む。こちらがスライダーをかけたと気づかず、まんまと被ってくれたさくらさんを大袈裟に笑い飛ばした。
ほんと、愉快です(←悪役だな
そして、のっそのっそと音姉の隣に座る。
「どうしたんだい My eldar sister?元気が無いようだね(歯をキラン」
綴りが間違っていると気づいた。
だが疲れすぎているのか、優等生の音姉は反応しない。おかしい。ゲームの仕様的に見えてはいるはずなのだが。(立ち絵の下に開くテキストウインドウ
「ほんとに大丈夫か……? まさか、にんs」
「兄さん、殴るよ?」
姉の代わりに妹が応戦。しぶしぶ引き下がる。
ふと見渡した室内。ピッカピカになっていて、念入りに掃除されたことがわかる。
エロ本を駆け引きにだしたことを少しだけ悪く思う。ちょっとくらいならご機嫌取りをしてもいいかと、音姉のリボンに手を添えた。
「今日、時間あるか?」
「一人で先に行っちゃうから、探したぜ。音姉!」
「それ、どらえモンだよ?」
「ん?」
改めて見れば、青たぬきの看板だった。本物の音姉の方を見ると、効果がバツグンだったようで青筋を浮かせて音姉ではないものにへんげしようとしていた。
逃走経路。思案し、キラリと爽やか笑顔で親指を立てる。
「どれだけ太っても音姉は音姉だぜっ」
気づいたときには、コンクリートの壁に顔を埋めていた。
思いっきり引き抜き、すたすた去っていこうとする音姉とコンタクトを試みる。
「お手っ」
「……弟君。今なら躊躇無く桜を枯らせそうなの」
「すみません」
全力で謝る。すると(まだ鬱憤気味だが)許してもらえた。ほっとして、立ち上がる。
「弟君。さっきからおかしいよ?」
「どこがだよ。俺は俺らしく生きてるだけなんだが」
「ん~と。たとえば、今していることとか」
今していること。電柱に綱をつけられた犬の射程外ぎりぎりに桜餅(ドックフード仕様)を置くお遊び。
ひとしきり考え、音姉に振り返る。
「音姉もするだろ?」
「しないよぉ」
可愛らしい声とは裏腹に、魔法で心臓を停止するというひどい仕打ちをして来た。地味にキツい。ドラゴンボールの主人公もびっくりな最強技だとおもう。
「やめてくれよ音姉ダーク……」
本質がそうだからか、危険状態であるというのにボケてしまった。更なる仕打ちが襲い掛かってくる。
「ぬぉおおおおお!!」
桜餅の強制生産。地味にキツい。意識が遠のいて、倒れるとともにべちゃっという音がした。
「あれー。としゆき、死んだコオロギみたいな顔してるぞー。lどうしたっとねーっ!?」
「ハッ」
そっちのルートに直進していないのに、病院生活を送る日陰だか大きいだかいうチビ少女を垣間見てしまった。そのショックで飛び起きた。
「弟君。大丈夫?」
心配げに覗き込んでくる瞳。どうやら、音姉に膝枕してもらっていたようだ。
「大丈夫だ。イフの世界に迷い込んでいたみたいだが……」
ななかも良いよなと、検討の余地をみつける。わけがわからないといったふうに音姉がクエスチョンマークを浮かべていたので、なでなでしてやる。
「帰るか」
「うん」
音姉の口の周りにあんこが付いていて、ゾクリとくる寒気を感じた。
「今日は、由夢も夕食を手伝うのか」
「うん。楽しみにしててくださいね、兄さん?」
「残念ながら、今日の俺は杉並なんだ。よって、兄さんではない。また、夕食を食べる義務はない」
「変なこと言ってないで、座ってたら?」
「そうする」
台所から退散してリビングにもどると、悲愴な顔つきをしているとさくらさんに指摘される。反論の余地もなかった。
「さくらさん」
「なぁに?」
「さくらさんって、魔法使えるんですよね。ひとつお願いしてもいいですか?」
「ううん。どんなお願い?」
「人を消し去る力で」
「桜を枯らせちゃおっかな~」
最高仕様の助け舟は来ないと知り、虎穴入らば虎子得れずという言葉を思い知りながら台所に再来する。ちょうど由夢(虎)から離れていた音姉(虎子)を、手で合図して引き寄せる。
「音姉。音姉は弟の俺に溺愛しているという設定だよな?」
「設定じゃなく、本心だよ」
マジな顔で言い切られた。こそばゆさと恐怖。混ぜこぜになる。
「音姉。それじゃあ、俺の願いをひとつくらいは叶えられるよな?」
「え? もっとカロリーを吐き出したいの?」
それだけは勘弁したい。マリオ的にいうと、すでに残数はゼロなのだ。音姉の魔法は、スター状態でも即死なトゲのごとく俺に食い込んできてしまうだろう。ゲームオーバーの無いギャルゲーのはずが、これはどういうことか。
「弟君がどうしてもって言うなら…………いいよ」
「どうしてもやめてほしい」
「えいっ」
無視された。というか、リビングでのさくらさんとの会話が筒抜けだったようだ。音姉はマジギレモードだった。気づけなかった俺が不甲斐なかった。
「あらまぁ、間違えたよ」
夢の中に、桜の木に寄り添う変なおばあちゃんが出てきた。とりあえず起きたら通報しようとおもう。
……追伸。量産しまくった桜餅は三人においしく食べられたようです。最後の抵抗のつもりで念じたカラシ入り桜餅はさくらさんに当たったようで、なによりです。
「さんざんだった」
音姉に運ばれてベッドに辿り着き、寝そべりながらぐったりとそう言う。音姉が呆れた風に言葉を返した。
「馬鹿みたいなこと言ってるからだよ。もっときちんとしてよね」
「……なんたって、音姉の彼氏だもんな。そりゃ、少しはきちんとしないと」
疲れた風に微笑んで、てのひらで顔を覆う。否定してくるであろう音姉を、無意識に拒絶しようとする仕草になってしまっていた。
足りない。何もかも。俺には、音姉に見合うだけのものがなにひとつない。
学校で男共に追われるのはなぜか――俺が、由夢や音姉やななかといっしょにいるには不釣合いな男だからだ。
気づいていた。気づかないフリをしていた。気づいたら、つらかった。見栄っぱりは虚しくて仕方がなかった。
今でも、俺はいろんな目に見つめられる。無くなって欲しくて仕方がなかった。認められたかった。音姉にも。周りにも。音姉を愛する自分にも。
だから、音姉の彼氏になって、決めた。
向き合うと。変わると。
ダ・カーポの時期は過ぎて、俺たちは大人になっていく。俺は、戸惑わないと決めた。
「音姉」
「うん」
「これからも、いっぱい迷惑かけるとおもう」
「うん」
「これからも、馬鹿やって、音姉の手を煩わせるとおもう」
「うん」
身体に寄せてくる、暖かさを感じた。
「わかってるよ」
「――それでも、音姉は俺から離れないんだな」
「当たり前だよ」
顔を覆う手を退けて、音姉を見る。音姉も、真っ直ぐ俺を見ていた。
「私と義之の恋の魔法。ずっと、いつまでだって、解けないから」
綺麗な瞳だった。
何もかもを包んでくれそうなくらいに、大空みたいな色をしている。何もかもを許してくれそうなくらいに、やさしく明るい。
穏やかな気候であった今日の空の、今の夜空みたいに綺麗――
「音姉」
「なあに?」
「誕生日。おめでとう」
由夢やさくらさんといっしょに言ったけれど、もう一度、強く心を籠めて囁く。
ともに、いまだ渡せていないプレゼントをポケットから取り出した。
そして、そっと、音姉の――音姫の首にかけた。
Happy birthday...
解説
数ヶ月ぶりのギャグ物。リアルは期末テスト二週間前というつらい状況ですが、書きました。
どうせ誰も見ないのにねぇ。そんな暇があったら勉強しろってねぇ(・ω・` )
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