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~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁

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-ANGEL HEART‐

 慎司の出番を増やすためのもの。エロ甘を書こうと思ったのだが、アウトへの脱線を強引に修正した感バレバレの変な展開になってしまったような……。
 

――

 A0001H-1[ぷろろーぐ]
A0001H-2[地味ネタ]

――

PR
「ふみゃあ……」
 朝。慎司は神姫とのことを夢でまで再生してしまって、起きた途端に悶絶した。
 夢の内容は昨日今日のことでは、無い。あれからすでに一週間が流れた。
「やあ、今日は早起きさんだね」
 慎司の部屋へ、女子がノックも無しに入って来た。
 彼女は、やたらと胸の豊かな女子だった。身長は180cmほどで痩身でありながらくびれたウエスト、そして綺麗な丸みを帯びている腰まわりが、その全体像を妖艶なものとしていた。可愛い顔立ちと声、幼く陽気な雰囲気や、無防備な距離感などの親しげで解放的な笑顔と仕草が、彼女が天性的に有する魅了の術の数々を自ら相殺していた。
 まあ、最近のご時世ではこのような無邪気さがそそるともいう。
 慎司に注視されて、神姫は嬉しげに微笑む。そしてベッドに近寄ると、ぴょんと効果音のつきそうな跳躍で慎司に覆い被さった。
「え、な、何ですか? も、もしかしてアレ・・ですか!? でも今日はちゃんと起きてたんですよ!?」
 仰向けの彼の上で、四つん這い。キスするのか、否そうではない。
 神姫は両手両脚をずるずる動かして後退する。彼女の顔が慎司の胸板を通過し、太ももで止まる。
「ちゃんと起きてしまった、と思ってたんだよね。リビングからでも聞こえるくらいにどたばたしてたもんね。欲しいんだよね・・・・・・・。昨日までは嫌だ嫌だと言ってたのに、凄い進展だ。凄く嬉しいよ。そりゃ、思春期の男の体は正直だから、私はそれだけで幸せなんだけど。やっぱり、愛があるというのはいいね」
 慎司を艶やかな上目遣いで見上げ、神姫は彼のズボンに手をかけた。
「今日はそのお礼。よろしくね、これからも欲望のままに毎日・・・・・・・・しっぽりと・・・・・――ね?」


「最近、慎司が構ってくれないの。大ショック~。これも、毎日しっぽり楽しんでるせいよね。つまりつまり、私に飽きちゃったってこと? 若熟女の豊かな肉感よりも、若い世代のきめ細かでピチピチな肌の方がいいってこと!? お肉よりも、だしが効いてるほうがいいの、ねえったらねえ!」
「皆、朝からぇろぇろモード全開すぎだよ!」
 リビングに下りると、母が慎司へ訴えかけた。
 対し神姫が、静かに反論する。
「どちらかといえば、私もお肉かと」
 話がこじれるから止めい。


      ○  ○  ○


 昼休み。
「……あれ、慎司さんは今日はパンですか?」
 売店へと向かう途中の廊下で、美希はそっと慎司の隣に身を寄せてくる。
「いや、弁当食べたんだけど……物足りなくて。神姫ヒルデに嫉妬した母さんが、弁当内の割合を変えちゃってさ」
「あ、そうですよね。もう遅い時間ですし」
 委員の集まりで、優と美希は慎司と食事を共にしなかった。ただ、昼食を買いに来るような時間で無いのは確かだ。
「美希ちゃんはどうしたの?」
「私はちょっと文房具を買いに……。それで慎司さんに会えるなんて、凄い偶然ですね」
「確かに」
 美希が息がかかるほどに身を寄せてくる。
 慎司は苦笑する。
 美希ちゃんは感情的になると、密着度がドンと跳ね上がる。前に一度、両手をぶんぶん振られまくったことがあった。とは言っても彩乃とは違って健全であるのが、なんとも微笑ましい。
神姫ブリュンヒルデとは上手くいっていますか?」
「うん。バッチシ良好。いろいろと波乱万丈だけどね、まあそれは元々な気もするし」
「神姫関連のことで、少し引きずってるようです。四条のことも、少し気にかけてあげてください」
「にゃあ?」
 予想外な申告に、慎司はすっとんきょんな声をあげてしまう。
 はて、神姫と雪人の間に何かいざこざがあっただろうか。
「四条は今、格技場にいます」
「じゃあ行ってくる」
「いえ……パンを買ってからでも、遅くはありません」
「あっ……」


 回し蹴りの練習だろうか、軸にする足を高速で入れ替えながらブンブンと大気を震わせている。
 少し躊躇った後、慎司は雪人に声をかけた。
「……ああ。お前か」
 雪人はただならぬ風格漂わせているのだが、慎司に怖がる様子は微塵も無い。
「ちゃんと昼食食べたの?」
「忘れていた。だが、大丈夫だろう」
「駄目だよ、ちゃんと休まなきゃ」
 慎司は雪人の胸に飛び込んだ。
 雪人はそれを咄嗟に抱え、目を丸くして慎司の顔を覗きこむ。
「雪人の身体から、悲鳴が聞こえる」
「……すまない。だから、そんな目をしないでくれ」
 なだめるように、雪人は慎司の髪を優しく撫でた。
 慎司は雪人をトロンとした目で見上げ「もう、子供扱いしないでにゃあ」などと呟いてはにかんだ。
 可愛い。
 そう思って雪人は、優しい目をして、慎司の視線を受け止める。
「特訓してるとこ、久々に見たよ。なんで?」
「少し前に、もう一つ久々な事があってね。……無力感というものを、十数年ぶりに体験した。いや、前の事を含めるともっと昔になるか」
神姫ヒルデのこと?」
「ああ。だが、心配しなくていい」
 強く、結び合う四つの瞳。
「ほんとうに。君の愛するヒトを、疎ましく思いはしない。君を愛するヒトを妬む暇はない。そんな暇があったら――」
 雪人の手が、慎司の後頭部を優しく掴む。
 そして、慎司に非常に近い距離で雪人は囁く。
 愛してる、と。
「一度でも多くアプローチして、君を俺だけの物にするさ」


      ○  ○  ○


 三波慎司みなみしんじ姫乃彩乃ひめのあやの夜夜優ややゆう風祭美希かざまみき四条雪人しじょうゆきと
 以上の四名が談笑する中、その校内放送は唐突に鳴り響く。
「にゃあ、呼ばれた」
 慎司が驚いた。他三名は、驚きを通り越して殺意すら抱いていた。
 代表して、優がぽつりと呟く。
「全焼するしかない」
「絶対に駄目だよ」
 それが真剣な顔だったので、慎司は戦慄きながら全力で拒絶した。


「ポテト旨すぎる。炭水化物のカイザーだろコレ……」
「何の用なのかな、神姫ヒルデ
 生徒会室に入ると、まず一番にマクドでテイクアウトした品々がテーブルいっぱいに広げられているのが見えた。慎司は無視することにした。仙童神姫せんどうブリュンヒルデへ目を向けた。なんとなく、彼女に呼び出された気がした。慎司のその予感は見事的中していた。
「クラスが別というのは、重大な事態だ。対策を練ろうと思う」
 確かに、慎司と友好関係がある学生で神姫は唯一のアンチクラスメイト。上級生なのだから仕方ないし、まず対策できるはずもない。
「ということで私は、整形手術をうけプロフィールを偽装し、同級生としてここに編入しようと考えたのだがどうかな?」
 慎司は、返す言葉がみつからなかった。当然反対するが、口論で負けるのは目に見えているから。とりあえず、助けを求めて「にゃー」と鳴いてみた。
 すると目の前の美女が、悪戯悪魔のような笑みを浮かべて応えた。
 にゃあ。


「暑中見舞い申し上げます♪」
 家に帰ると、慎司は自分の机に紙切れが置いてあることに気づいた。
 写真だった。なぜか猫コスプレした慎司の母が、胸の谷間を見せつける魅惑的なポーズをしている。
 補足するが、その母は写真ではなく実体だ。写真はもっと健全なものだった。
「……どうしたのさ。まだ夏休みにも入ってないよ」
「や、だから練習よ練習。もとい、慎司に久しぶりにハァハァしてほしいなっていう肉欲の暴走」
「僕、家から離れるからさ。お父さんとらぶらぶすればいいよ」
 慎司は譲歩した。自分が制限リミッターになっているのなら少しくらいは気を使ってもいい、と考えたのだ。
 対し、
「何言ってるのよ、ムスコが好きなのよ♪」
「下ネタすぎるにゃあ!」
 その夜、美猫が蜘蛛のように獲物を絡め取る騒音がしばらく響いた。少しして、音はほとんど無くなった。耳を澄ませば聞こえる程度まで。
 逆にぇろい。


      ○  ○  ○


「満腹になった。でもまだまだたくさんあるから、みんなにも食べて欲しい」
 生徒会室に五人がいた。 三波慎司みなみしんじ姫乃彩乃ひめのあやの夜夜優ややゆう風祭美希かざまみき四条雪人しじょうゆきと仙童神姫せんどうブリュンヒルデの五人である。
 神姫は、テーブル一杯に広げられているマクドのテイクアウト品の数々を指差して他四人に言った。次の瞬間、慎司があまりに激しいリアクションをしてのたうちまわったのだが誰にも読み取れなかった。
 前回と関係性があるのかについては不問とする。
「はーい、神姫ちゃん」
「何かね彩乃」
 彩乃が挙手し、神姫が許した。
 二人が名前で呼び合う仲であることに、慎司は少しばかり驚きを得た。
「整形できるところなんてない。君は最高に美しいよ」
「口説くのは何か違う。というかそれも前回の話だよ」
 天然ではなく、意図してボケたようだ。彩乃はてへっと舌を出して一歩下がった。
 神姫はうんと頷く。そして両手を広げ、にっこりと笑った。
「ルールは簡単だ。制限時間内に多く食べることができた者が勝利となる。最下位の者には罰ゲームが待っているよ」
「なんでミニゲーム始まるの」
 普段の慎司はもっとポケポケしているのだが、神姫や彩乃の前ではツッコミに回らざるを得ないようだ。
 だが、予想外なところから慎司を阻む声があがった。優である。
「何も臆する事はない――」
 レスメガネモードは、余裕げに神姫へ微笑みかけた。勝利を確信した笑みだった。その根拠は一体どこにあるのか。
「四対一だ。負ける要素が一つも見つからない」
「当然、バトルロワイヤルだが」
 神姫が初めてツッコミに回った。
 優は目を見開いて硬直している。慎司は思った、君は天然だったんだねと。
 その慎司の視線に、優は気づいた。見つめ合う二人。ゆるり、ゆるりと、慎司はまれに見るほどにっこりとした笑みを浮かべた。普段から無垢や純真という言葉が似合う素晴らしい笑顔や仕草だが、今はすべてを受け入れる天使か聖女かと見紛うばかりの美しい微笑であった。
 そして、優は顔を伏せた。必死に言い訳を考えていたのに、慎司と目を合わせた事で安心感を得てしまったのだ。いいんじゃねーのという考えに至ってしまったということはつまり、少なからず認めてしまったことになる。いや、過去にもそう思うことがあったがその時は上手い言い訳をできたのでついでに自分を騙しもした、そうして故意に目を背けてきた真実に今、不意に直面してしまった。
 自分はやっぱり天然ボケなのか、優はあからさまに悲壮感を醸し出して天井を見上げた。天井を見上げた後、懐からメガネを取り出すとそれを慎司にソッとかけてダッシュした。
 彼の心の中の夕日に向かって走り出した。ちょっとだけ涙を流しながら明日に向かって走り出した。
 気がつけば、遭難そうなんしていた。
「そうなんです」
 ナレーションへ向かってヒャドをぶっ放すと、優は腕組みをして周りを見渡した。
 木しかなかった。補足するなら、草や葉っぱや幹しかない。茶色と緑で彩られたスケッチブック、タイトルは『森』
 視線を斜め上へ向け、再び周囲を索敵する。校舎は大きめなのだが、この木々はそれより高いらしい。
「なら登ればいいか」
 優は適等な木に狙いを定め、歩き出した。


1st Stage
     『根元』


 ピッ。
スイラムが現れた』
 ピッ。
『優はどうする? 戦う
         防御
         逃亡 』
「……どうするかな」
 サッサと木に登れよ、というような外野の罵声を受けたかのように、優は突然ハッと我に返って立ち上がる。
 その拍子に手から零れ落ちたのは、型の古い携帯ゲーム機。なぜ落ちているのかは不明である。
「クソッ、もう日が暮れちまってる」
 優は木の上を見つめた。葉の間隙から夕暮れの光が漏れていた。優は先を急ぐ事にした。


2nd Stage
     『幹 中腹部』


「ほう。アリんこ軍国からのスパイではないと申すか?」
「そうでございます、ヘラクレス陛下」
 優は深くお辞儀をした。その相手はなんとデカいカブトムシだった。異常だ。だが優は適応していた、とりあえず天の使いかそれ的な勇者という立場を確保することに尽力した。そして、今まさに成功せんというところだ。
「ですが、私はそやつらの本拠地を知っています。早速ですが用件を言わせていただきます、私の情報を買ってはいただけませんか? そちらには、とても好都合でしょう。臣下の方々はどうお思いですか?」
 互いにニヤリと微笑みあう最中、砲撃が轟いた。
 大気が蠢く。
 敵襲、とその場にいる誰もが覚った。
「貴様の媚びも、無駄になったようだな」
「そのようですね。手を打っておいて良かったです」
 優の周りで、爆発が起きた。砂煙が立ち込める中で、声が響く。
 助けに参りました勇者様、と。
「おのれ、やはりアリんこ軍国のスパイだったか……ッ」
 戦がはじまる。だが精鋭のいないこの場は、最も早く済んでしまいそうである。
 呪怨の声を浴びて、優は嘲笑する。
「そう、俺はキリギリスだったのさ」
 慎司たちがこの場に居合わせれば、ああまた天然炸裂かと思ったことだろう。
 そうして反カブト無視王国は滅び、真聖勇者様帝国が誕生する。歓喜に飲まれる最中、コツンと大きな音を響かせてこの場から去る者がいても誰も気づかない。
 更なる高みへ、勇者は駆け上がる。


3rd Stage
     『天空』


 上り詰めた。
 その先にソレはいた。
「よくぞここまで来た……少し余興はどうだ。私は興味がある、高みに上り詰めようともがく者どもはどんな気持ちでいるのかと。頂点に君臨する私は、な」
 美貌をもつ男が、マントを翻した。
「関係ない。俺は、お前の立ち止まる此処から更に上へ進むだけだ。立ちはだかるならお前でも倒す、最強かどうかなんて関係ない」
 勇者と呼ぶには冷徹過ぎ、魔王と呼ぶには優しすぎる眼光をその男へ。優は立ち止まらない。進む、何の躊躇もなく。
「おもしろい事を言う。ここが頂点だ。貴様が目指してきた究極は、此処にある」
「へぇ。やっと辿り着いたわけか」
「分かったなら、早く気張るがいい」
 次の瞬間、目に見えるほどの覇気が集う。所謂、充填リロードであった。嵐の前の静けさを呼び込むほど超常的であるが、確かにこれは予備動作であった。
「遺言を心に想うのも忘れるな。お前は此処から、再び戻ることになる。屍で、生まれた時にいた最底辺まで還ることになる」
 そうして開放に至る、巨槌に酷似した破砕形式の破壊効果。それは闇を僕として、<ruby>夜闇が空にそっと掛かる様<rt>神業</rt></ruby>を模倣する。
 その圧巻たる風景が落ちてくる・・・・・最中、ちょうど見つけた。
 優の眼に、少しだけ歓喜の色が滲んだ。
 決断は早かった。たまらなくなってお菓子の元へ駆け出す子供のように、優は目標のものだけ見て一目散に走り出した。
 それもほんの少しの間。なぜなら優の目標とする物は、遥かにあったから。
「恐れを為して逃げ帰るか! それも良かろう! だが生きてさえいれば、まだまだ続くぞ。微々たる幸福も、大いなる絶望も――」
 目も開けられぬほどの風の中にいる優に、背後の高笑いは遠すぎて聞こえなかった。


「おかえり」
 優の姿を見ての一声は、相当待ち望んだのか、とても甘ったるい声色だった。
 飛び込んできたところをポスッと受け止めただけでは足らず、優は慎司の髪に頬を当てる。
「待っててくれたのか」
「うん。だって、いっしょに食べたかったんだもん」
 机にお取り置きされている、優と慎司の分。
 優は目を細めた。あまりの嬉しさにどんな顔をすればいいかわからないのだ。服越しに感じる慎司の腰がちょっと細くなったように錯覚し、優は確かめるように手をわさわさと動かす。
「なんで一人なんだ」
「だって、授業中だよ? あ、僕も優も三時限くらいサボリになっちゃってるであります」
 慎司はてへっと舌を出す。
「不良だな。なんで待ったんだよ」
「だーかーらー、いっしょに食べたかったんだもんもんーっ! それに、優といっしょなら不良も悪くない、かな」
 次の瞬間――、
 優の中でドス黒い何かがむくりと首を擡げた。
 スイッチが切り替わるかのようだった。僕(・)と|俺の他にもう一つある、という事実は存在しないが凄まじい衝動が体を支配した。
 顔が酷く歪んでしまうのを抑えられない。ククッと笑いたくてたまらない。
「……反省しないなんて、慎司は悪い子だな」
 "衝動"を抑えきれずに漏らした言葉は、優しいような冷たいような、表現のしようのない声色だった。
 慎司がキョトンとするのに気を留めない。そして優の手が、撫でるように抉るように握り潰すように愛でるように、慎司の体をまさぐる。
 数度ビクンッビクンッと硬直を繰り返す慎司だが、そんなことで優は止まらない。唐突に、ピタリと手を止めたかと思うと、それは終了ではなく"確認"だった。
 優の目が、胸に抱いている慎司をジッと見下ろす。
 慎司は荒い息をしていた。だが苦しそうではなかった。
 意味することは一つ。
 まだ息が整っていないというのに、慎司は優へ必死に話しかけようとする。
 優はそれを眺めているだけだ。慎司の乞うような目に、優は視線を合わせるだけ。
 ――この時、優は気づいた。
 この衝動を何と現せばいいのか。僕(・)と|俺の他にもう一つあるこれは、何と言うのか。
「……僕、男の子だよぉ…………」
 そしてそれは、慎司の囀りを以て完全にオンとなる。
「悪い子は、俺様・・が調教してやるよ」
 口を三日月に歪め、優は囁く。触れられたわけではないのに、慎司の体がビクンと飛び上がった。
 恐怖の美貌をもつ狼が全力で子犬を怖がらせる、そんな恋愛事情。


「罰ゲームだ」
 夜。シャワーから上がってきたばかりのバスローブ姿の慎司はわけがわからず「にゃあ」と鳴いた。
 その前には仙童神姫、彩乃、美希が並んでいる。
 三人の服装は、外出用と呼ぶにはなんだか雰囲気が違う。室内用にゆったりしているのだろうか。
 神姫と彩乃に両腕に抱きつかれた慎司は、美希とにぱっと笑い合う。
 なんなのにゃあ。
 慎司は問いかけ――ることができなかった。
 美希の方が速かった。彼女は慎司の胸板をぽーんと押したのだ。
 慎司ごと神姫と彩乃の二人も弾き飛ばされた。違った、タイミングを合わせて神姫と彩乃が跳んだのだ。
 そして慎司は浴場へ逆戻り。ざぼーんという大きな水音が響く、その後の音を塗り潰すように。


 コメント:序盤を書きたかっただけ。いちおう頑張ったはずなのに、konozamaという。レベルがまだまだ足りない。これを楽しめた人がいたなら、その方は勇者。崇めさせてほしい。と、コメントを誘うみなせっせトラップを仕掛けてみる。ここまで自分でけなす作品をなぜ投稿するのかというと、ええと、うん、さあ次いってみよー!


      ○  ○  ○


 猛暑も近いというのに、妙に涼しい目覚めだった。
 慎司は思う。ひんやり気持ち良い、ってか冷たい、ってか寒みぃぃぃぃぃッ!
 覚醒からぼおっと天井を見つめていた慎司だったが、感覚も普段どおりになった途端すごい勢いで直立した。
 勢い余って頭から床に落ちた。違った。ワンカートに詰め込んだような量の保冷剤に、慎司は頭を沈めた。
「フリーザッ!」
 声が妙に高音だったのは、驚愕のためか。というかどんな悲鳴だ、反射的なものとは到底思えない。
 素晴らしい精神力のおかげで再三の事態にはならなかった。慎司は、安全地帯から状況把握を行う。
 今慎司が立つのは、先ほどまで慎司が寝そべっていた所だ。その周囲にトラップは散りばめられていた。
 いや、もっとひどい。部屋全体にまで陳列されている。行き届いている。足の踏み場がない。というか新たな地形が創造されている。それほど山積みされている箇所もあるということだ。
 冷凍庫で寝たんだっけ、と慎司は考えてしまった。常温の場所でこんなものを保管するはずがないから、販売元だともしかしたらそんなこともあるかもしれない。だがそれだと起きることができずに凍死するはずなので、慎司はこの場所を自室だと思い込むことにした。
 慎司は、ドアらしき物(三分の一しか見えない)がある方へ向いた。床上浸水、という言葉を思い浮かべたが振り払った。リアクションはとりすぎても全然足りないが、今は一刻を争う。残念ながら凍死の可能性は存続していた。白い息を吐きながら、この部屋から脱出することを考え、慎司は行動を起こした。
「おーい!」
 SOSしてみた。
 返答があった。
「にょろーん」
 慎司は硬直した。そのまま芯まで凍り付いてしまいそうだったので、慌ててストレッチを行う。
 しばらくすると、体が温まってきた。だが返答の主がこっちへ来ない。仕方ないので、第二の手段に出る。
 慎司はしゃがみ込んだ。そしてドアへの進路にある障害物を、丁重に脇へ避けていく。
 モグラのように土を掘り進めていく単調作業なわけだ。
 だがその考えは甘かった。慎司が手を付けるのは、雪のようなものなのだ。直ぐに慎司の手が真っ赤になってしまう。赤は灼熱を思わせる色だが、慎司の体温はちっとも上がらない。
 すると突然、慎司がだらんと両腕を脱力させた。顔は苦渋に満ちている。ふと、叫び出す。
「こんな、こんなところで諦めるつもりなのか! 一緒に前に進むんだろ!?」
『……でも、もう無理だよ。俺はもう、無理なんだ』
 慎司が左腕と会話しはじめた。
 完璧な腹話術だった。慎司がいつそんなスキルを磨き上げたのかは定かでない、死の危険が身近なために何らかの覚醒を起こしたのかもしれないがバッドエンドを盛り上げるだけなんて悲しすぎる。
{そうだよ、俺たちはもうここで終わるんだ。……へへっ、今思えば短い付き合いだったな}
 右腕、参戦。
「何言ってんだよ、馬鹿言うなよ! てめえらはくだらねぇよ!」
『ハッ、おまえこそ図々しいぞ。痛い目見てるのは俺たちなんだぜ、おまえは痛くも痒くも無ぇ。おまえに俺たちの何が分かるって言うんだ』
「ハラマキ! なんて事を言うんだ!」
 随分個性的なネーミングだったが、ツッコむ者がいないので淡々と話は進む。
{おいおい、無理言うなよ。命令しかしないこいつに、俺たちの苦しみが分かるはずも無いってんだ}
「メンボウ……」
 歯を食い縛る慎司。悔しかった。ここで死んでしまうことより、何よりも運命共同体の友に信じてもらえていないことが。死んでも死に切れなかった。この齟齬で彼らをずっと苦しめ続けてきていたのなら、今ここで清算したい。しなければならないと慎司は思った。
 慎司は決断した。前をキッと睨む。
{おまえ、まさか――}
 友の声を聞き終えぬ間に、慎司は走り出した。
 両腕を庇って胴を大きく反らし、ぶつかる。慎司は跳ね飛ばされてしまったが、たしかに効果はあった。といっても全体的に微々たるものなのだが。
 だが気持ちは溢れるほどに込められていた。他人の心を、揺り動かす程に。
「決めたんだ、生きるって! ハラマキも、メンボウも、死なせない! 絶対に死なせない!」
 慎司は、打ちひしがれる友の吐息を聞いたような気がした。
 少しの間が空いて、友は慎司へ優しく語りかけた。
『人が話している途中なんだぞ。おまえはなんて自己中心的なんだ。』
「問題はそこかよ。っていうか、人じゃないだろ」
 ……。


 ……。


 ……。


<別パターン>
 両腕を庇って胴を大きく反らし、ぶつかる。慎司は跳ね飛ばされてしまったが、たしかに効果はあった。といっても全体的に微々たるものなのだが。
 だが気持ちは溢れるほどに込められていた。他人の心を、揺り動かす程に。
「決めたんだ、生きるって! ハラマキも、メンボウも、死なせない! 絶対に死なせない!」
 慎司は、打ちひしがれる友の声を聞いたような気がした。
 少しの間が空いて、友は慎司へ優しく語りかけた。
【メッチャ痛いんだけど。ってかなんで俺? 無関係じゃね? マジで何考えてんの? ってか慰謝料よこせ】
 胴、襲来。
 沈黙が流れる。
「……」
『……』
{……}
「ごめん」
『ごめん』
{スマソ}


コメント:なんか慎司のキャラが変わったけど、寒さで精神イカれたからってことにしといて( ・ω・) あとDBとは関係ない。フリーズのer型、みたいな。


      ○  ○  ○


前回の続き
 とまあそんなこんなでお昼になり(>ええー?)
 場面は移ってパチンコ店。優(レスメガネアンド鬼畜モード)が黙々と目の前の台にのめり込んでいる。
 年齢制限とか大丈夫だったのだろうか。
 優の集中が霧散した。きっかけは、隣人の舌打ちだった。優はそちらに目を向けて、すぐに察した。
 なんとなく、優は救いの手を差し伸べた。隣人はびっくりしたあと、はにかんで受け取った。たった一粒の、ほんの小さな優しい話である。
 すぐ後だった、そちらから天国のBGMが響きだしたのは。
 優は目を見張った。すると隣人と目が合った。数秒して、お互いにはにかみ合った。
 そう、バトルスタートの合図である。
 その結果、玉がいっぱい詰め込まれた箱を身の丈になるまで積み重ねて優はパチンコ店から出た。店内から泣き声が聞こえるが優は完全無視した。
 玉だけこんなにあっても億万長者にはなれない。別の店で換金というのは可能なのだろうか。とにもかくにも、優は世界旅行に行こうと夢に浸る。


1st Stage
     『街角』


 これからどうしようか、とスクワットでこの喜びを表現しつつ考えていた優の前に、立ちはだかる者がいた。
「何してるんだ……?」
「見て分からないか」
 雪人の問いに、優は至極当然のように言ってのけた。雪人は手鏡を持ち歩こうと心に決めた、だがこんなハプニングは普段は起こらない。というか普段から起こったら困る。世界は謎だらけというが、表現がわからないという意味では優のこれもその一つかもしれない。だがそんなのは嫌だ。
「ところで、付近で未成年者お断りの娯楽に入り浸っている学生がいるらしい。ところで、その箱の中身は何だ?」
「留年しまくった二十歳越えの学生じゃねーの。それか制服フェチのパチスラーだろ。あんたみたいな生徒会の中でも屈指の優等生が直々に探す必要もない、散った散った」
「そうだといいが念のためだ。ここで会ったのも何かの縁だろう、おまえも手伝え。で、その箱の中身は?」
 雪人の誘いに、優は首を振った。
「ごめん、俺は『ここで会ったが百年目』派だから。後、今日は良心が痛む日だから帰るわ」
 流派とかあるのだろうか。微妙に自白している節もあるが、雪人の意識は優の抱える箱だけに向いていた。前世が金の亡者だったとかそんなスペシャルスキルが何かしているわけではなく、勘が働いているのだろう。
「没収する」
 雪人は手のひらを見せた。優は絶望した、「おっ、恋愛運がいいよキミ」と手相占いのネタをかましたり「み、見逃してくだせぇ……四条二等兵」と琴線に触れるボケをかましたりしようと考えたが現状を打破できないのでそれは断念した。
「だめだ。これは俺様の命なんだ。メガンテ(自滅呪文)してでも渡さん」
 それでは結局命が無くなってしまうぞ、優よ。
「いや、渡してもらう。生徒会の予算が足りないのでな、丁度良い」
「横領かよ。もっと渡したくなくなったぞ……あっ」
 優は自白したも同然。
 その直後から、雪人は容赦しなくなった。
 優は一目散に逃げ出す。全力疾駆で逃亡を図る。悔しかった。やるせなかった。男に追われるなんてなんて花のない時間なんだ、そう思って優は携帯を取り出した。番号をプッシュした。繋がった。
『もしもs』
「あ、仙童総隊長? 俺、優なんだけど。今からちょっと慎司を拉致って二人だけの愛の逃避行してくるから、邪魔するなら直ぐ来てね」
 ブチッ。優は言いたい事だけ述べて携帯を閉じ、懐に戻した。嘘を駆使してまで鬼を増やすなどあまりにも愚かしいが、どんなデメリットがあろうともこのむさくるしい状況を打破できるならかまわないと優は考えていた。要はスケベなのであった。

 その時には――もうはじまっていた。
 空を黒が覆う。黒は軍勢ではなく一個、絶望のドデカモノリス、厖大な鉄の夜空である。
 優は、神姫が嘲笑うのを聞いた気がした。
 次の瞬間、流星群が降り注いだ――。


 ハイテク万能☆強靭無敵☆最新最凶☆<ruby>水陸宙両用超無敵亜光速飛行大戦艦<rt>ウルトラスーパーな</rt></ruby>『魔弾艇マダンテ』が昨日、某所に出向いて数十時間に及ぶ絨毯爆撃を執り行った。このことについて所有主は「蚊がいたから」と証言している。実際に、この行為がされた後に蚊などの微生物は一匹も残らなかった。


 コメント:蚊とともに大きな建築物などもいっしょに殲☆滅されたわけですね。ファーストステージまでしかいけないなんてどんだけエクストラモード。ところで私はイージーモードで縛りプレイするのが好き( ・ω・) あとDQは関係ない。だってあっちは爆撃じゃなくて魔法だし。ごめん嘘吐いた、名前は無断拝借した。ギャグ物だし、弱小サイトだし、良いかななんて。

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