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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
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5.


 私は違和感を覚えた。
「はて――"変身は、変身カードを変身ベルトに装填することで可能"なはずだが」
 天使から受けた説明どおりなら、そのはず。
 実際、変身ベルトの役割を天使という生命体が担い、変身カードの代わりに音を読み取ることで厖大な力を発生させる。
 だが、あの少女の持っているものは変身カードだけだ。少女の持っていた黒玉に音が宿っていることはあっても、変身ベルトではない。
 いや、仮に悪魔の骸が変身ベルトであったとしよう。それでも違和感が拭いきれない。変身ベルトが変身カードでもあるなんて、ありえるのだろうか?
 悩むうち、思い出した。子供の頃に見ていた朝のヒーロータイムで、ツール且つキーという変身ヒーローのタイプが出てきていたことを。
 黒玉あれはそういうものなのかもしれない、と納得する。
「一個で変身効果を発揮できるのは便利そうだ」
 私も天使を剥いでしまおうかな。あ、でも、私って"ド"と話したことがないか。どうやったら意思疎通できるのだろう、どんなコツがあるのだろうか。
『変なこと考えてないで、チャッチャと目を開けてください♪』
 急かされたので、しぶしぶ従う。すると、ブラックアウトした視界が復活した。
『なんで目を閉じていたのですか?♪』
「いや、美少女の変身シーンっていろいろアレだからさ。もし全年齢対象というのに引っ掛かっちゃうしろものだったら困るので、一応、対策を取っといたのでありますよ」
 私は少女、いや魔女に向き直った。
 初対面時となんらかわりない服装に、やはり魔女コスプレだなと感想を得たりする。疑いようが無い。そう――すごく羨ましい。
『気をつけてください、嫌なねいろの気配がプンプンします♪』
「ほう、想像していたのとは違うな。怪物って聞いてたけど。っていうか、あいつとの初邂逅を果たしたときに言ってくれなかったね、やる気あるのかなお主は」
 では、今までのような単なる戦闘とはいかないのだろうか。はて、嫌なねいろの浄化方法とは如何なるものなのだろうか。
 救済手段を一括検索。脳裏で左から右に駆け抜ける情報羅列は、今成すに必要な手段を構築し、解を導き、示す。
 彼の光無き世界に、光在る世界たいようを叩き込め。
 それが回答。識よりの返答。
「余裕――ッ!」
 一息に対象の元へ駆け抜ける。


 摩天楼から飛び出す二つ。
 人間では出し得ぬ速度で天駆ける、此は戦の神にして剣の女神。
 この突撃から逃れうる者などいない。眼に止まることを許さぬ――否、瞳に映ることさえ許さない速度で駆け迫るそれをかわせるものなど存在しない。
 躱すどころか応戦するものがあるとすれば、其もまた神。
「――ッ」
 神の疾走を瞳に捉え、華麗なステップ一つでその突撃を回避した、其は神を屠る上位生命体。
 人でありながら神である魔女の種。
 女神が見上げる先、魔女は挑発的に上げられた手に|総てを凍て尽くす紫電の魔炎かみのさばきを絡める。その特徴的すぎる武器を持ち得るのは、この世界では彼女のみだろう。
 対抗し得るのは、同じ唯一無二の手のみ。
「『飛弧』」
 それに似合うものを、女神は発した。一直線に魔女へ伸びるそれは、斬撃。尤も、丈は紫電一閃のときより数百倍大きいが。
 空に、楕円形の黒い満月が一つ浮かんだ。
 避けるなど絶対に不可能な一撃だが、魔女はこれを現在の蓄電だけで引き裂いた。
 しかも片手のもののみ、だ。魔術の威力は底知れない。
 魔女はもう一つの炎弾を後ろにひいた。本来は体重移動を利用することでピッチングした球の速度を増加させるが、次元違いのこの戦闘においては別の意味をもつ。
 充填、凝縮または莫大化のサインだ。
 まるで壁のような見た目の第二の魔術、魔女が背を預ける箇所以外から轟々と噴き出されるのは数々の武器の模倣。所謂、斉射。
 この世界を洗い流す雨のような。
「――『飛弧』」
 応戦するは、前作と比べ物にならぬ"凌駕"
 満月などという大きさを幾百足しても、今作のものには並べぬだろう。
 模造品の空ができたのだから。
 威力は先ほど述べたとおり。天空に取って代わるだけのことはあるというものだ。
 そしてその空は、物理的すぎる雨を決して許さなかった。
 後に残るは始まりのときと同じ、女神と魔女。だが互いに、知り得た事が一つある。
 互角。実力は拮抗。決着は簡単にはつかないだろう。
「全く、面白い」
 女神が呟く。不用意な発言だ。これが神闘だと、誰よりも解っているだろうに。
「だが少女よ、私は奪還という名目があるために君と剣を交えているが、君にはどんな目的がある?」
「少女って呼ばないでほしいわ、あなたも同じくらいじゃない。――簡単よ。力が、欲しいの」
 "ファ"の音が響いた。魔女は両腕を広げ、懐を晒し、そのままの姿勢で空を仰ぎ見る。
 豊満な二つの果実が強調される。月光を浴びてシルエットとなっても、それは艶かしい。
 これより行うは第三の魔術。投擲か設置か、今までどおりならばその二者択一で予想がついた。
 だがこの度は違う、零落した大地が"創造"された。
 世界を塗り替えるであろう、裂音を伴う重々しきそれ。勿論、新たな世界には月と空と地平線しか残らない。
 ――ゆるりと、自由落下をはじめた。
 一瞬の間もかからずに、魔女は魔術効果範囲から逃れている。対し女神は、空が落ちてくるようなこの危機をどうにか相殺せねばならない。
 構成物質は雷かつ氷かつ炎、纏うは風。剣のように斬るでもなく槍のように突くでもなく棍棒のように叩き潰すでもない、攻撃手段は押しつぶす。
「圧倒的なのであろうな……」
 隙間はない、濃度の差もない。これはお手上げだと言うように、弱気な口調で女神が囁く。
「『テトラ・アース』」
 魔女は女神を埋葬し始める。


「『飛弧』」
 全力に近い一撃を見舞うが、迫り来る巨大な脅威はビクともしなかった。一度は空に成り得たそれでも、今となっては、制空権の一部すら掻っ攫えぬらしい。
 やれやれ、打てる手が無いな。私は困り果てる。
 最大戦力で迎え撃っても無意味なのなら、躱すほかないが、変身機構により音速をも願えるこの身であっても、果てしなく見える『テトラ・アース』を迂回するのは難しいだろう。
 しかも、『テトラ・アース』が被害を生むまえに魔女をどうにかしなければいけない。
 ――やれやれ、救世者というのも大変だな。
「これより、ていを改める」
 ユーモアに乏しい私なので、せっかく決まりかけていたのにと心残りはある。
 だが、それの具現はさすがに容易かった。


 怨嗟は地響きを囀る。淵源は最早“演技”をする必要もなくなったとばかりに、狂気を曝け出している。
 壊れた笑みを浮かべ高笑いしているのが、少女の容貌であるため、ある種の美しさが醸し出されている。
 否、少女が魔女であるからだろうか。
 今にも摩天楼をプレスしてしまいそうな『テトラ・アース』 それと天の作る擬似的な地平線が、なぜか極光に滾っていた。
 ――少女は気づかない。その地平線に、ぽつんと斑点が浮かんだことに。
 気づいていたとしても、無駄だっただろう。なぜなら、そのすぐ後に接触を果たしたからだ。
 。砲声とも咆声とも変わらない、空間を揺るがすような音が響く。
 出処はビル十階の中間高度――少女が何かに打ち落とされた勢いのままで激突した位置からだ。
 その直線距離上には『テトラ・アース』という障害があったはずだが、まるで悪夢だったかのように掻き消えていた。少女がそれの維持ができぬほど、ダメージを負ったということだろうか。
 少女が叩き込まれたビルから、推察も可能だ。青白に染まる建造物は一人分の体積に当たる弾丸を受けてもなお、微動だにしない。どころか、少女が叩き込まれた部位の他には亀裂すら拡がっていない。
 つまりは打撃の威力が、ほぼ全て少女に還元されたということ。
「殴ったのは顔だったが、ダメージは全身だろうな。僥倖だ」
 『テトラ・アース』の被う距離を幾秒かで迂回してきた――実に地球半周分・・・・・を満たす――女神は、涼しい顔をして嬉しがる。
 装飾ひとつないワンピースが、風に右左とはためき、心もとない。
「ならば、次に望むのは追撃」
 速度についての問題は皆無。空域が圧にたわんだ次の瞬間、女神は矢のようになった。
 矢じりは、細身になったバルムンクである。――故に、成すのは凌駕なる眷属のものではない。
 一点集中の"暗殺"、渾身を遥かに超えた打突だ。
「――ッ」
 狙いは外れ、穿たれたのは汚濁を体現する神雷の業火。女神はまだ、見定めた魔女までの距離を走り切ってはいないのだから、魔女の用意した防御壁だったのか。
 否、あえて言うが、魔女は炎弾より強力な手を発動したのだ。現状が魔術を弱体化させたのか、それか女神の新たな力の態勢が圧倒的なのか。
 少なくとも、事態は女神の優勢に傾いた。実力の拮抗しなくなったのだから、当然だろう。決着の刻まで、一気に加速する。
「チョコ・L・ヴィータ」
 女神は、目と鼻の先にいる魔女の名を呼ぶ。
 魔女は唇を浅く噛み、表情はわずかに苦く。――女神は気を一つも緩めずに、最後となるであろう演舞を執り行う。
 肩へ脚へ腰へ首へ頭へ喉へ腹へ顔面へ。両手持ちで軽やかに躍らせる、刃。女神は容赦ない、魔女の構成を解し億単位の肉片へ変える算段だ。
 だが魔女は、ギリギリ付いていった。速度に差はあれど、手数が二倍であるからだろうか。
 魔術を携えた両掌は、刃と合わさると、まるで鋼にぶつけたような音を打ち鳴らす。堅い。女神は手段を替える。
 ぶつけたバルムンクをそのまま離さず、力で押し切らんとするかのよう。
 間近で、女神と魔女の双眸が見つめ合った。その中で、女神は小さく呟いた。
「『飛弧』」
 紫電一閃が飛ぶという概念を突き破って、刃先から単に放出した。この世界に産み落としたのは、爆発だ。
 女神を巻き込んでしまいそうだれど、魔女にしか奔流は牙を向かなかった。
 魔女の片腕が、あらぬ方向の宙域で落ち行く。
 魔女はあまりにも大きな傷穴を強く強く、残る片手で握りこむ。衣装は襤褸切れ同然。満身創痍。
 女神は涼しい顔をして、無表情で、最後の一太刀を下さんとした。
 ――誰が予想し得ただろうか。
 同時、魔女の瞳が明るい紫色の光を漲らせる。
 ――魔女の行使する『悪魔の眩惑』が、神にも及ぶとは。
 そして、女神の愛剣は空を斬った。紫色の宙にずぶりと突き刺さった。
 ――魔女の手のひらで、女神は踊らされる。
 無数の蝶が嘲笑うような羽音をたて、八方に飛び去る。女神はゆっくり、ゆっくり、振り下ろした剣を引き寄せた。
「あなたの手持ちは、変身用とその武器だけみたいね……残念」
 その背後に、無傷で佇む魔女の本体・・がいる。
 力が満ち溢れる瞳を細め、妖しく笑った。
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