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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁
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0.
ばいばいー、またねー、と口々に一言。私はそれらに笑顔を振りまくことで応え、最後に手を振ってみんなを見送る。
私は独りになった。その途端の寂しさといったらツライことこの上ないが、そんなものは瞬間風速より一瞬である。疲労困憊のせいで寂寥感なんて吹っ飛んでしまった。
しかしいかんせん、あれだけ騒いでおきながら、クリパ二次会に繰り出せる
私は白い息を吐き、帰路に目を向けた。そして、小さい歩幅ながらも一歩一歩進み出す。時折吹く寒風に身を縮み込ませながら。
それに何より、この独りっきりは寂寞の方が正しいと私は思う。同じ字であっても、寂寞には物悲しさが表現されないから。
私は淋しくなどない。
ネオンの光に彩られた街から離れ、少し歩くだけ。それだけで我が家に辿り着ける。ほらこの通り、五分とかからない。
住宅街の端(つまり隣り合う繁華街に一番近い場所)の家を選んだ親に感謝したくなるが、常日頃の通学の面倒さ(バスに乗るのだが、バス停までは走って十五分ほどかかる)を冷静に思い返せば相殺、それ以上である。
コンチクショウめ。
「ん……?」
ドアを開け進入、外の寒さとかけ離れた
その間、私の思考回路は今日一日を勝手に振り返りだした。
最もDiaryに記すべきは、独り身な者が集まって馬鹿騒ぎするクリスマスイヴパーティに参加してきた事。
参加した理由はなんだっただろう。朝の起床時、カレンダーの日付から「今日はクリスマスイヴか……」と思うと同時に最近観たドラマの一シーンをふと連想してしまい、自分の生きる現実とのギャップを見つめ直してしまった所為かもしれない。
それか、体がぷるぷる震え出してしまいそうな冬の寒さが心に沁みた所為かもしれない。
しかしクリパが始まって三十分もしないうちに、私は他の参加者と"独り身"と同じ括りにされるのでさえ嫌になって(盛り上がり方が異常だったんだよ……)一次会がそこそこに終わり場所を移す(つまり二次会スタート)時を見計らって逃げ出した。のんびり過ごすのが、私の性に合っているらしい。べつに、イベントデイに日常とは違う刺激的な(甘酸っぱいなら尚良し?)何かが起きてくれてもいいんだが。けど負け犬の遠吠えみたいなテンションのパーティは嫌なんだよ……
自室のドアも開けたところで、私は違和感を抱いた。
いや、見たままに伝えるなら"違和感を見た"と言うべきか。
私の真ん前(数歩先ではあるんだけどね)にある机の上に、"違和感"がぽんっと置いてある。"違和感"は箱、飾りつけされた掌大の白い四角柱――
――だった。地の文で描写し始めた時は。
描写が終わりを迎える直前に、"違和感"は形を変えた。
「はっじめまっしてぇー♪」
羊のようなもこもこした生命体が箱から飛び出し、そのまま宙で浮遊した。
その生命体は、現実には在り得ない真ん丸い図体をしている。ってか、手が無いように見えるとはどういうことだろう。
浮遊しているというのも、何かおかしい。羽がぱたぱた動いているので浮遊の原動力はそれなのだろうが、羽は体を浮遊させるにそぐわない大きさである(私の小指もない丈)。
何だこれ……。
「神聖御霊序列第八位属性・亜種"
私の心の声を読み取ったかのような返答を有難う。しかし、最初の何位だとかいうのが全くわからない。
1.
「――君は、壊れたピアノを直しに来たと言ったね」
「あいですー♪ 人間は視覚情報の受信範囲に音波を含まないので、現物はお見せできませんですがー?♪」
ココアを啜る。ふっと息を吐く。
「……音波がなんちゃらかんちゃらは兎も角として、だ」
ココアの温か味が体にじわじわ浸透していくのを感じる。それはいつもなら心地よいのだが、今の私の心理状態には黒画用紙に塗る墨なみに無意味だ。
私はジロリと♪天使に目を向けた。「私はピアノ修理などのスキルは無いよ」
「いえー、人間界での用法とは異なるのでー。それに、あなたにしかできないことなのですよー♪」
「やっぱりそうくるか」選ばれし者であると判明する。素晴らしいくらいに王道展開でアルな。
「……それで、私は変身でもして悪の化身と闘うのかな?」
皮肉口調で呟く。すると♪天使のもこもこが、びよ~んと左右に伸びた。
もしや、人間でいう"ビクッ"なのだろうか。
もしそうなのなら、図星だったということの証明になる。
解釈の仕方に戸惑う必要はなく、
「……い、いえ。調律の回数はそれほど多くない場合もあると思われますです。ええ、戦闘になる確率は高いですがべつにそれが主な役目ってわけでなくてー♪」
すぐに、もっと明確な情報が提示された。どうやら、
承諾か否かの前に、ピアノ修理のためのプロセスを説明してもらった方が良さそうだ。
私は足を組み替えた。その動作の勢いで目の前の机からちょっと離れる。
座っているのが移動用に車輪もついた回転イスだったためだ。こういった些細な作用は、結構邪魔である。今のように、肘を突けない程度に机との距離が空いてしまうことが多い。
本来なら教科書やノート、悪くても漫画や雑誌が置かれる机の上には、今は居座るモノがいた。
♪天使。者などという人型ではなく、物なんて無機質でもなさそうな、非現実的なモノ。
「あ、え、どうやってピアノを直すか……ですか?♪」
疑問系におんぷ付ける口調が、すごく神だ。
「そ、そうですよね、言わなくちゃならないですよねー。や、やっぱり、"とにかく丸め込んで巻き込んでみる"なんて方法は駄目ですよねー♪」
「勿論だ」
「わ、わかりました。説明するです♪」
♪天使は大きく息を吸った。そして、話し始めた。
「ピアノはただ音が出なくなっただけで、部品が破損したわけではないのです♪ 音が出ない理由は、単に"音が逃げ出しちゃった"というだけ♪
この世界の何処かに潜んでいるということまでは判明したので、あなたにはそれを集めて欲しいのです♪」
「……それのどこに、戦闘が絡むんだ」
音を集める、別の秘密結社でもあるのか。
「音は、嫌なねいろに変わっちゃうことがあるんです♪ 嫌なねいろというのは、手当たり次第めちゃくちゃにしちゃう怪物みたいなもの♪」
ふむぅ、まさか音が怪物になるとは思わなかった。
そう驚くと同時に、私の中で答えが出た。
「せめて鬼ごっこレベルなら私にもなんとかできたかもしれないが、怪物を倒す実力はない」
頼られているのにナイナイ返答ばかりで、少し心苦しくなる。だが本当のことだ、言わざるを得ない。
「いえ、力はこちらで用意しますですよー♪ っていうか、あなたにもう宿っています」
「……何?」
「人間界の情報で比喩するなら、変身ライダーですかね♪ 私が変身ベルトの役割で、あなたに宿る力が変身カードになるのです、そしてあなたが決めポーズをとって変身なのです♪」なんて解りやすい比喩。けど、私の疑問に答えてはいない。
「どこに力があるんだ」
私はイスから半分以上腰を浮かせて、身を乗り出していた。表情にも力が入ってしまっていたのか、♪天使がまた左右に伸びてしまう。
元に戻った後、それは何事も無かったかのように返答した。
「そこに、です」
私の、丘になった双胸のつくる、くっきりした谷間を見つめて。
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