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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁
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4.
朝。ホームルーム前。
青空があった。白い雲は風のままにゆっくりとその形を変えている、――まあそんなことはどうでもいい。
「ま、ママ……」
「何も言わなくていい。というか聞かないでくれ。っていうか、あんたのママじゃない」
私は満身創痍になった。寝たきりにならなかったことが不幸中の幸いである。
――いや、訂正しよう。なぜなら、私が不幸の内に居たのかはまだ不明なのだから。
これからじっくり、検証しなくてはならない。その前にまず、歩けるようにならなくてはならない。
「すまないが、購買部で何か買ってきてくれないかな。100円までで」
「う、うん、いいけど。でも、全品百円以上であることを忘れてるなんて、よっぽどの事があったんだね」
「すまないが、購買部で何か買ってきてくれないかな。ひとつカシで」
検証のための捜索には、足が必要である。なのに私はこの様だ。
――わかってもらえるだろうか、このどうしようもない
すごく近いこの高校にも親に送迎してもらわなければならない。飯ひとつ、頭を下げなければ手に入れられない。
限りあるプライドの消費を少しでも抑えるため、親に弁当を作ってもらうような結果はなんとか回避したが(常は自分で作る)、友達に頼まなくてはならぬという五十歩百歩な展開にしかならなかった。
無力感が、どでかい。
――わかってもらえるだろうか、このどうしようもない
さらに補足すると、|よっぽどの事があったと思われる(レアな)私への周囲からの視線がキツい。孤立感はいつもどおりなのだけどな。可哀想な目ってのが新鮮で、耐性が無くて、駄目か。
――わかってもらえるだろうか、
落ちていく中で私は、咄嗟に手を差し伸べたのに、悲鳴を鎮めてあげるためにはちょっと遅すぎたのだ。
悪魔という殻に篭もった天使が、脳裏に浮上する。何もわからないけれど、ただただ胸騒ぎだけが疼く。
「私のオススメのメロンマロンバレンタインパインパンをね、買ってきたのね!」
「わかった。まず君が先にそのカオスパンを食してみてくれ」
このどうしようもない
または苦慮や煩悶、憂苦でも可。
そして夕刻。
少しでも多く休養をとるため、傷ついた身体を引き摺って帰路に着いた。
だが不思議なことに、私は道に迷った。
いや――見知らぬ洋館の一室に迷い込んだ。
いっぱい棚があった。オーロラのようなものを吐き出す真紅の石が、棚に置かれたもののすべてに埋め込まれている。石の光は、遠いものも近いものもまるで目の前にあるかのように輝くので、眩すぎて直視できない。
目を細めたその直後、音がした。音叉が鳴らしたような、頭に響く高いその音は、まさに天使のそれ。
"ド"ではなく"ファ"であったことを気に留めておく。ずっと聞こえ続けるから、いつか無意識的に除外してしまうかもしれないので。
石にできるかぎり目を向けず、私は棚がつくる真っ直ぐの道を行き――婆の前まで歩み寄った。
「誰何?」
「やあやあやあやあ、ここはお手伝い屋さん。願いを言ってごらんなさい?」
しゃがれた、婆の嬉しげな声。古びた木の机に、軽やかなテンポで中指の腹をぶつけているのが耳障りだ。
「願いを叶える、などと非現実的なことは信じない」
「……ほう。まだ欲心に囚われていないのかい。そりゃ困るねぇ、どれ、もういっちょ積んでみるかな」
婆は机の縁まで両手を下げる。そしてガタンと大きな音がした途端に、机がガラスショーケースに取って代わった。
その内には、単に真紅の石だけが並べられている。
(ま、ずい――ッ)
気づけば体と心が離れていた。今このことを思う
体の方は、目を半開きにして、顔から生気をなくし、ゆるゆると目の前の石へもっと近づこうとしている。まるで、漫画でみたゾンビのそれと全く同じだ。
第六感が告げている。これ以上は、分離だけで済まない。
空白になってしまう感覚がついに訪れたとき、途端に総てが通常へと巻き戻った。
いや、それだけではない。
視界を埋める石の光も、洋館の一室すらも、消えた。
空き地のような場所に、私と婆は居て、
――初対面の少女も、居た。
けれど、知っている顔ではあった。
「チョコ・
黒が基調の、紫の意匠がされたそのコスプレは、まるで魔女。と言っても、そこらへんの童話に出てきそうなものではない。男受けが良さそうな、肌色の多い服装である。絶対領域もちゃんと装備されているようで、アキバにかりだされたとしても通用しそうだ。
私のもあんなのなのかなと、二度も変身しておきながらいまさら私は恥ずかしくなった。
私のそれとは全く別方向の"圧倒"で、魔女はこの場に静寂を打ち落とした。
私の目の前には、綺麗な超巨大仙人掌が出来上がっていた。まるで水晶のようなその針山は、私の目と鼻の先にまで槍を伸ばしてきている。下敷きになった婆は穴だらけかぺちゃんこだろう。
「……逃げられたわね」
私の予想に反し、魔女はそう呟いた。
空中浮遊していた彼女は、とんっと力強い音をたてて片脚で着地し仁王立ち。コスプレが光り輝いたかと思うと、黒いドレスに変貌した。
彼女の目がすっと私に向いたので、私は咄嗟に変に力を込めてしまった。だが、どうやら、私と対峙するような位置に降り立った彼女は、私など眼中になかったらしい。
後ろに振り返りゆく彼女に、ちょっとした清らかな笑みが浮かんでいたように見えた。
「でも上出来じゃないかしら。
その瞬間、私は雷のような衝撃に撃たれた。
ここからは見えないが、魔女だったあの少女を隔てた先に在ると確信していた。
「
「真反対な名で呼ばれているわよ。どう答える?」
私の一声に、彼女が振り返った。そして、小さな唇に細い人差し指を当て妖しく笑うと、傍にいる悪魔へ返事を促す。
悪魔は、一度私に向けてきたあの笑顔で、言った。
「キッショ☠」
私は怯えのようなものを覚えた。挫けかけた。
そんな私を我にかえさせたのは、少女の勝ち誇ったような顔。
私と天使のことを何も知らないくせに。と思う。
だから私も、少女と悪魔のことを何も知らないくせに、不敵に笑ってみせる。
そして再び悪魔へ向いた。
「聞いてくれ、天使。君が話してくれないから、君の心情を予想して私は言うよ。ちょっとした誤差は許してほしい。広い心を持って、聞いてほしい」
すぅっと息を吸う。気合を入れる。
なぜなら、これから悪魔よりも魔女よりも悪くなるからだ。悪魔や魔女を騙せるくらいに、悪く。――清らかに。
「――強がりだったんだ。私は何も、方法を知らないから。どうもしてあげられなかったから、あんな態度をとるしかなかった。
本当は、天使と同じ気持ちだよ」
変貌はすぐに起こった。
バリバリと音がして、罅が無数に走るとともに悪魔が砕け散った。
「わふー♪」
飛び出た天使は、すこぶる元気な様子で疾駆。
そして、ぴょんっと私の胸の中に飛び込んできた。
「信じていたのですよ疑ってなかったのですよ優しい方だと解っていたですよ~♪」
「嘘こけ」
「う、嘘じゃないですの!?♪」
今度は少女へ、私が勝ち誇った笑みを向ける。
「それじゃあ天使、そろそろ……奴めを追うとしようか」
そして、魔女のそれとは全く別方向の"圧倒"を見せ付ける。
我が"圧倒"の名は、牙。逃れられぬもの、つまりどこにいても察知できるもの。
「変身――」
"ド"が響くと同時、私には行くべき戦場がハッキリ見えた。
光無き闇の天空で、ギン、という甲高い金属音が響く。神話の刀剣と同名をもつものと、長刃のような爪とがぶつかり合ったのだ。
刀剣の担い手は少女。爪の持ち主は装甲まみれな重装兵、且つ一切の光を拒むような深い闇色の獣。
機械仕掛けの本能。だが今は、総てを束縛、支配されて従者と化している。
「
『ほう……追いついてきたのかえ? やわなじょうちゃんでは、ないようじゃの。』
主人が
若干ノイズが混ざっていて、聞き取りにくいものである。だが、そのしゃがれ声が真紅の石を見せびらかしていた婆のものと一致すると、少女は確信できた。
『ま、ええわ。話し相手に逃げられたところなんでな、ちと相手してやるわい』
本能の頭部に、不規則なテンポでカチッカチッと回る
「不細工だな」
『だが強いぞ? むすめっこは貧弱で何の価値もなかったが、こんなシロモノを無数に生み出せる可能性は秘めていた。快楽を感じたよ。そして、確信を得た。ああ、わしはあのむすめっこを拾うためこれまでは運の総てを温存してきたのだ。とね』
「何の話だ? ――いや、よそう。なんとなく察しがつく。わざわざ聞くたくはないな」
『では切り合うかの』
螺旋の平たい表面で、溢れんばかりの紅光が炸裂する。一度は少女を翻弄したその威圧だが、二度目はない。
「その程度の誘惑、ガン見でも寄せ付けぬわ。――では、血祭りにあげてやろうかの?」
あるのは三度目。婆の口調を模倣するような、お茶目な少女が執行する。
それはたった一人が
少女はなめらなかな動きで、連続でナイフを投げる。八つで一セットだが、そのうち半数しか敵へ向かわない。
『兵団』の構築が予想される。
だがそれには、二つの問題が付きまとう。『兵団』完成までの時間稼ぎがひとつ、『兵団』の射線上に標的を固定しなければいけないのがひとつ。
後者は、大規模となれば解消されてしまうだろう。なら狙うは、より強調される前者。
――その結果、余裕だと機械仕掛けの本能は、その
少女にとって三度目となるこの交戦は、少女に"能力的有利性"を持たせていない。いうなれば、一度目と二度目は"少女が圧倒できる"と数値が示すイージーな戦闘だったのだ。だが今回は、少女と敵は互角、いや、狩獣の繰り手の結論を借りるなら、少女は敵よりも弱い。
少女が為す圧倒には数値に示されない力が必要。少女は不確かなそれをまず理解し、掌握し、自在とせよ。その後に、
でなければ、少女に明日はこない。
狩獣は、
だが少女の望む、時間稼ぎという目的は達成できる。だから少女は、軽々と掻い潜られてしまう障害を何度も何度も作っていく。
狩獣はその度に適切な行路を見つけ、少女との距離を詰める。数十度目、『兵団』の一部を解体し、少女はついに隙間無い一個をぶつけることとした。
今度こそ躱せない。
しかし、躱せないのがどうというのだと言う風に狩獣は得物で手近な空間を抉る。それに伴う強烈な衝撃が八方に炸裂し、回避不能な必殺の弾幕を粉砕した。
これをもって狩獣は、凌駕が容易い"力押し"が解決策になりえないと、少女に伝えるのだ。
生き残りたければ壊してみせろよと、勝ち気に瞳の光を躍らせる。
「ッ」
――すると、それに応えるように、狩獣の胴体と下肢を断ち切らんとする一突が降ってきた。
だが、突き刺さるだけで押し留まってしまう。今までの敵だったなら両断は必至の剛速だったが、狩獣は今までのとは違うのだ。
だからこそこの罠に嵌ってしまったのだと、言える。
『伏兵』のように、不意打ちという形で登場してきたのは銀色の大十字架、神話刀剣バルムンク。いつもの『伏兵』と材料が違うという点は、狩獣の予想を上回る事実を明示する。
つまりこの三度目も、お遊びであると。
――少女は小さく笑った。
「完成。『兵団』」
満を持して、一個が君臨した。
必殺を数百束ね、消去という力を孕む。まだ神には届かずとも、その
さすがにこれには狩獣も危機感を得たのか、宙を
これは『封結』がバルムンクでも行使できるという、実験証明である。
「……此度はサッサと終わらせる。懸念事項が気になって、仕方がないんだな」
その言葉通りであれば、少女が牽制しながら渾身の一撃を編み出して敵を打ち倒したという簡単なチャートだった。
だが狩獣は、得物を振りかざし、自身を包む黒い衝撃を巻き起こした。それは空間を抉ったときの余波とは比べ物にならない。いうなればそれこそが本来の"爪撃"の威力である。
必殺においても上段に位置するであろう"爪撃"による防壁は、頑なな砦も同然。集まれば消去な『兵団』を必殺という要素から取り崩すことだろう。しかしそれは竜巻のようなもので、いつかは掻き消えてしまう。
対し『兵団』は、その機を待つようにピタリと止まった。そうして衝突を避けた後、『兵団』は再び進軍を始めた。威力は、止まる前のまるのままだ。
結果は、あえて言わないでおこう。一匹の獣が大量殺戮兵器に勝てるはずがない、という不等式は誰も疑いようが無いから。
「無傷とは、恐れ入った。我が愛剣に相応しいな」
『兵団』の直撃を敵と共に受けたバルムンクは、傷一つ負っていない。
少女は満足げに呟く、未だ緊張に強張ったままの顔と一致しない。
「――あの婆は所詮、宿主だ。本体がどこかにいるはず」
そして遥か彼方を見つめ、言った。天使が返事する。
『近いです♪ でも、それとは別にもう一つ、感じるです♪ まるで私のような……♪』
「何?」
月光を帯びた花園が、光の一切閉ざされた牢獄の中に出来ていた。
その真ん中で、三角座りした銀髪の少女。影が無い。それどころか、花が帯びているのと同じ光を発していた。
聖女と言われれば信じれそうな、神秘的雰囲気を醸し出していた。瞳は白く見える、無色だった。
裸足だった。
「すごいとこね、ここは。花は本物なの?」
声がした。少女は人形のように整った顔に感情を宿さぬまま、無垢っぽさを窺わせる柔らかなソプラノトーンの声を囁き、返した。
「ううん。嘘物。見たことはないから、ただ気持ちの赴くまま、作ってみたの。素敵かしら?」
「ええ。でも、やっぱり無知なのが解るわ。矛盾してる、この場所に月が無いせいで」
「仕方ないよ、婆さまは私を閉じ込めるのだもの。では、月を打ち上げましょうか? そうすれば素敵になれる?」
「いいえ。今のままでは、きっと無理よ。どうすればいいか、わからない?」
わからない。だから少女は、振り向いた。
その途端に、魔女の魔力に惑わされる。
「美しき新しい世界を見てみればいいのよ。――私が作るものを見れば、あなたは素敵なものを作れるわ」
「今の世界は、駄目なのかしら……?」
「ええ、駄目よ。ついてくれば、わかるわ」
魔女は惑わせる。
だがもしかしたら、魔力など用いていないかもしれないけれど。
「チョコ・L・ヴィータ」
辿り着いた目的地に、予想外の人物が居たので、私は驚いた。
タンッとこちらが降り立つのを凝視してくるのは、やはりあのアイドル。あの魔女。あの、泥棒猫。
天使を取り戻しに来たか、と一瞬だけ思う。だが、そんなことよりももっと有力な案を思いつき、思いついた我自身を疑った。
しかしそれも、情報が足りなかったからだ。目の前の少女は、まるで私の疑念を払うように、スッと片手をあげた。
その手の人差し指にかけられた、銀の鎖。それの繋がる先に、黒い玉がある。ダイヤ型を丸めたような、細長いそれは、銀河の煌きのようなものが見える。
宇宙を一塊にしたらあんなものかもしれないと、思った。
「これは、悪魔の滓を固めたものよ。私の大事な友達が、そうしてくれたの」
「……あんたに憑いてる、音か」
「音というの。知らないけど、たぶん、そう。なんなら、尋ねてみる? ちょうど、あなたの目の前にいるけど?」
少女はこちらに、ペンダントを突き出した。私は横に首を振る。
「遠慮する。それよりも意図を窺いたいな。悪魔の骸に、なんの価値がある? いや――大体の予想はついているのだけど、一応ね」
「予想通りだと思うわ。今、私の返答を
"ド"の音が響き渡った。違和感を抱いたが、それどころじゃなくなった。
視界がブラックアウトしたのだ。
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