忍者ブログ
ようこそ!



(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁

当ブログは管理人の運営しております個人サイトであります。CWCコード関連も少々行っております。プログラム弄るのが好きなだけですが。
◆相互リンク・ブックマークについて◆
相互リンクをいつでも募集しています。下記アドレスに一言ドゾ。
リンクは「http://7c.c7.cc/」 ブックマークもこちらでお願いします。 ◆コメントについて◆
・topカテゴリの最新記事を推奨。
・荒らし目的はしないで下さい。(削除対象)
・広告はしないで下さい。(削除対象)
◆注意事項◆
当サイトで掲載している画像は、著作権等の侵害を目的とするものではありません。
掲載している画像に関して削除依頼などがございましたら、下記のアドレスまで権利保有者の方がご連絡ください。即座に削除等の対応をとらして頂きます。
zeon845884@yahoo.co.jp
◆バナーについて◆
現在はありません。

 

最新コメント
[08/10 水瀬愁]
[08/09 サイと]
[05/06 グレー・デ・ルイス]
[04/30 哲]
[02/05 ブノカタミツツ]
[275]  [274]  [273]  [272]  [271]  [270]  [269]  [267]  [260]  [265]  [264]  

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 気にするなよ数字を取るために必要なんだ少しの間だけ我慢してくれ。マネージャーの男が言う、ご機嫌取りをしてくる。
 彼はしなくていいことをしている。いつもいつも、こうだ。
 その旨を伝えてもいいが、面倒すぎる。よって無視だ――と、私もいつもどおりかったるさに負ける。
 私は何も返さずにソファに身を沈みこんだ。「……早く、次の仕事をとってきてよ」
 マネージャーの笑顔が崩れた。そして表情が二度も変わる。
 一つ目はともかく、二つ目の表情は、私の意思を正しく汲み取ったという合図。
「ああ、すぐにでも。といっても、しばらくは下準備が続くだろうけどね」
 それでもいいさ。後に、望み描く物が手に入るなら。
 だが彼は、身動ぎ一つしなかった。私の隣で、棒のように立ったままだった。
 何かを望んでいるとすぐにわかった。何かとは、何か。それも目を合わせた途端に、すぐ察する。
「……私、まだちょっと物足りないわ」
 本音とは裏腹に、魅惑的にそう言ってみせる。床に手をつき、犬のように地面を這って彼の側までにじり寄る。
 ……これは彼の好きな仕草だ。彼は、言葉責めできるような淫らしい態度の女が好物なのだ。
 妄想のしすぎだと思う。だが、笑い飛ばしも見放しもしない。してはならない。
 私は、忠実にその妄想を再現する。
 手癖が悪いと彼が言った仕草を再現――いやらしく、彼のズボンのチャックに指を添える。
 足癖が悪いと彼が言った仕草を再現――だがくるりと回って、彼にお尻を向ける。尻たぶをおもいっきり、彼の欲望に押し付ける。
 彼がうめき声をあげた。それで、演技が成功したことがわかる。演技が成功した後なら、これ以上の気を張る必要はない。けだものと化す彼の前では、喘ぎ声すらあげなくても全然大丈夫。
 私は小さくほくそ笑んだ。大丈夫、彼がこの表情を見てしまうことも絶対に無い。


2.


「ばいばい」
 ごめんの次にそう言って、彼は雪景色の向こうに消え去ってしまった。
 私は白い息を吐いて、自らの手首に巻いた腕時計を見下ろす。
「もう、イヴは終わっちゃった――」
 皮肉だ。聖夜が過ぎた後に、こんな無力感しか残らないだなんて。
 聖夜は、もっとロマンチックなものだと思っていた。イヴの夜とは恋愛の味方なのだと、過信していた。
 でも、神様の仕打ちも酷い。私が夢見がちであったことは認めるけれど、この世界で生きることに嫌気が差してしまうくらいに私を痛めつけてしまうだなんて。
「どうしよう、これから」
 自棄を起こして食いまくるか。それか、一人部屋に閉じこもって枕を濡らすか。実現不可能だけど、豪華なレストランで食事ってのも良いな。
 でも、思い浮かぶイメージのどれもがしっくりこない。その結果、輝かしいイメージを思い浮かべて、逆にもやもやしてしまうという、おかしなことになる。
 全部いいはずなのに、何か一つが欠けているように感じる。それが私を物足りなくさせる。
 なぜなのだろう。
「あ――」
 いいや、解らないはずが無い。何てったって、欠けているそれとは、私にとって大事すぎるものなのだから。
 ううん、違う。大事すぎた・・・・・もの。今はもう、大切に思ってはいけない。
「雪――」
 そう、
 何もかもが変わっていく世界の中で、変わって欲しくなかったものまで変わってしまった。その事実は、とても受け入れがたいけど、前を向くためには受け止めるしかない。
 受け止めれば、ちょっぴり泣いてしまうだろう。蹴躓いた子供みたいにわんわんと、ちょびっとだけ。
 でも四季の流れを感じるよりずっと早く、その涙は乾く。跡すら残らないはずだ。
 私の胸を満たす悲しみも、涙の跡と同じ末路を辿り、萎んでいくに違いない。
 そんなものだ、失恋の痛みなんて。
「――せっかくのホワイトクリスマスなのに、君といっしょにいられないだなんて」
 そう呟いたとき、声を聞いた。
 突然のことで意味までは聞き取れなかったが、確かに私は声変わりしていない少年のような声を聞いた。
 吃驚して辺りを見回しても、誰もいない。当然だ。聖夜と聖日の狭間にあるようなこの午前零時どきに、駅前に人がいるとすれば、その人は敗北者に限る。
 私のような。
「……(こく?)」
 今一度、前後を索敵する。だがやはり、人影すら無い。
 不可解に思いながらも、私は気にしないことにした。そして、泥沼のような物思いから抜け出せたのをこれ幸いに帰宅の道を歩み出す。
 少しして、次は不意に何かが肩に乗るような感触があった。
 何かが肩に乗っている、気がする。何が乗っているわけでもない、でもずっと重みを感じる。イヴの出来事が疲労となっているのだろうか。
 まあ、正体が掴めないのでどうもできない。
 更に少しして、私は自宅の玄関へとたどり着く。
「ただいま」
 ドアノブを回し家に入り、リビングでくつろいでいた親の小言も軽くかわして、自室に駆け込む。
 そして漸く、私は痛みを取り戻した。
「う……くぅ……っ」
 泣きたくてたまらない。おかしいと思わずにはいられない。
 起床とともに淑やかに想い、
 朝陽の差す頃から夕陽が落ちるまで手を取り合い微笑み合い、
 月影が夜を淡く溶かす頃も夢で一途な想いを告白する。
 恋人でもないのに、彼はそんな傍らまで近づいてきてくれたから。
 私をこれ以上ないってくらい、夢中にさせたから。
「イヴの夜に一緒に居てくれたのに、なんで――?」
 変えてしまいたい。壊れてもいいから、変えてしまいたい。
 世界を思うがままに、変えてしまいたい。
「――え?」
 私はまた声を聞いた。今度ははっきりしていて、意味まで聞き取れた。
 願いを叶えてあげる、と。




 尚も渋る私に、♪天使はこう提案した。
「チュートリアルを受けてみませんか♪」
 テストプレイしてみて、できそうだったら今後とも行えばいいとのこと。
「さあ、いつまでも話ばかりというのもなんですし、身体を動かしてみましょう!♪」
 ちなみに、私に選択権はないようだ。
 まばゆい光が視界を埋め尽くし、頭が殴打されたかのように思考が鈍くなったその次の瞬間には、私は立っていた。
 どこに。――どこだろう。
 何処だ此処は。
 月や星の明かりはまるで明滅するように、濃く薄くを不規則に繰り返す。青白く照る摩天楼。人気はない、どころか凍えてしまいそうなほど寒々しい。体感する温度の話でないのが幸いだろう、肌寒い程度でも風邪気味になってしまうほど私は貧弱体質なのだ。いや私の事はいいか。
『あそこに敵がいます。倒してみましょう♪』
「その声……天使エンジェル、か? 一体どこから?」
 私はきょろきょろしようとした。それより早く、私は、片頬の血の気がサッと引く感覚に吃驚する。
 咄嗟に振り向いた。その視線の先に、とりあえず何かがいた。
 少年のような容姿と背丈、しかし纏っているものが明らかに毒々しい。
 棘のある鎧に、棘のあるガントレット、銃刀法に真っ正面から刃向かうような大剣、異界要素盛りだくさんである。
 あの人が敵なのだろうか。私は迷った。
『いや、ここにはあの人しか見当たらないですし、迷う必要なんてないでしょう?♪』
「それは極論だ。探せばまだ何か見つかるかもしれない。」
『そうですか。なら補足説明しましょう。あの人が、敵です♪』
 ふむぅ、私もそんな気がしてきた。だってあの人が大剣を構えたんだもの。
 向こうに敵意があると解れば、私に反論の余地などない。だが新たに問題が浮上した。それは結構、重要かもしれないこと。
 ――どんな決めポーズをとれば変身できるのか、わからない。
『変身ベルト役の私をどこかに身に付ける、って所が最初の段階ですかね♪』
「……そういえばそうだな」
 あの人が黒い霧みたいなものを纏い始めている。闘気だろうか。あれを射出してこちらを攻撃する算段だったなら、もうそろそろ変身しなくてはいけない頃合だろう。
 行動への移行は迅速に済ます。私は押しつぶす勢いで、天使を胸に掻き寄せた。


――コォーン――


 摩天楼から一つ、直立するビルが消えた。黒い弧に二分された後、黒霧状になって蒸発してしまったのだ。
 弧はビルの丈と同等、またはそれ以上という圧倒的巨大さを誇る"飛ぶ斬撃"
 見た目に相応する威力が実証されたわけだ。
 その射出主は、振り切った大剣を手元に引き戻す。それと同時に、柱のようにそそり立つ霧の中から人影が飛び出した。
 それは弾丸に勝るとも劣らない速度でビルの壁に向かい、跳躍する。切って進む風をそのまま纏って、壁を蹴り、更なる宙の推進力を補充――己が望む方向へと推進する。
 ゆるゆると、それの纏う風から不透明の霧が除かれていった。あらわになるそれの姿。紅いミニスカートからは白いハイニーソックスで包まれた長い足がのびている。怒りに燃える瞳でこちらを睨んでいる。
 勝ち気そうで、まさに正義の少女といったところ。
 彼女の両手が残像に変じる。
 電光石火のクイックドロー。腰の両脇にくくりつけられた横向きのホルスター二つに秘められた"光"へと手を抜き差ししただけに見える、投擲モーション。
 それによって、硝子小片が五・六、宙に解放される。
 精密射撃の物が数個と、予測射撃の物がこちらも数個。だがどれも大剣士をぶち抜く弾丸にはならず、海を渡来する鳥のように横切るだけだった。
 大剣士が、予測を裏切る速度で跳躍し、回避行動を行ったから。理由は、たったそれだけ。
 そう、この戦いはそんな次元だ。戦略の存在し得ない、力のみが存在感を主張できる超越戦闘。他者を屠るために必要なものはたった一つ、小手先でない実力。たとえば"飛ぶ斬撃"や"弾丸速度の短剣"がそれに当たる。
 
 まるで獣のように咆哮を放ち、自己を思い知らせよ。――そう、戦闘開始の火ぶたはすでに切られたのだから。

 少女は、言った。
「……詐欺だ」
 その片手が、鬱憤を晴らすようにもう一本だけスローイングナイフを引き抜き、手首を回す動作だけで投げた。
 手近にあったビルの壁に突き立った。そして――ビルは崩壊した。
「なぜ『へ・ん・し・ん! まじかるちぇ~んじ♪』と叫ばせてくれない。決めポーズがいると初めに言ったのは、ほかならぬ天使じゃないか」
 まだ怒り冷め切らぬ様子で、少女は独語。その手はわきわきしており、次の瞬間にもう一・二本は武器を取り出しそうだ。
「っていうか、なぜに肉弾戦仕様なんだこの変身は。エク○アか? 作者はガンダム○0スキーなのか? だからヒロインに可愛らし~い魔法少女コスプレをさせてくれないのか?」
 その不満点をじゅうぶん解消してくれそうな今のコスチュームだが、確かにステッキも二股の帽子もない。月に代わってお仕置きよ等の発言に不相応な見た目であるのも、また事実。
「……まあ、いい」
 少女は細めた双眸で、敵を見下ろした。
「鬱憤はここで、全て吐き出す。題して『憂さ晴らし』」
 そう告げる少女の声は、ゲームを楽しもうとするプレイヤーのそれ。


――コォーン――


 "ド"と"ミ"の音が同時に、響き渡る。まるで展開範囲を奪い合っていがみ合うかのように、その二つはいつまでもいつまでも余韻の尾を引く。
 だが、その場にいる当事者の二人の耳には、その音が届いていないだろう。少年のような容貌の大剣士は緊迫した様子で眉一つ動かすことなく、ジッと、少女を見ている。少女も同じように、大剣士を見ている。
「――クッ。ククッ、ひ、ヒヒッ」
 突然、少女は笑った。唇を引き上げ、酷く不気味に。
 次の瞬間、少女は冷たい無表情に戻って・・・・・・・・・・跳躍、摩天楼の頂上に飛び出す。
 その手にはすでに薄く小さい兇器が握られている――
「ッ!!」
 そして、雨のような広範囲射撃。
 だが大剣士は、己が身を得物の下に匿う事でやり過ごした。冷静かつ適正な判断と見て取れる、少なくとも咄嗟に範囲外まで逃げ出そうとして軽傷を負うよりかは。
 まあ、どちらも正しい避け方ではないのだが。
 大剣士のミスは少女を見続けなかったこと。一瞬の雨が止んだ後にはもう、先ほどまでの宙に少女は留まっていなかった。
 となれば時間が食われる。索敵のための時間、必要かつ必至なる数コンマ。
 少女はその隙に、大剣士の背後をとった。
 極小の兇器からの斬撃。深く抉りこむことは勿論叶わない。むしろ少女も、そこまで高望みはしていない。
「私もね、この力を扱うのは初めてだから、知ったときは驚いたのだけど――」
 大剣士が身を引いて、少女との距離をとった。少女は追撃しない。それどころか、戦闘姿勢もとらずに、不敵の笑みを浮かべている。
「――剣使いは、剣を自在に扱うことができる。そう、其を突き動かす、其に孕まれた、加速度すらも」
 次の瞬間、大剣士の背中を五つの"突撃"が射抜いた。
 だがここで、少女にも誤算が生じる。大剣士は痛みに、動きを鈍くしなかったのだ。
 ここで思い出して欲しい。少女の極小の間合いと比べ、あまりにも広い大剣士の射程まあいを。
 そう、大剣士と少女との距離が、互いの得物が届かない程であっても関係ない。少女はまだ大剣士の射程内にいるのだ。
「――ッ!!」
 ビルを砂塵と化す偉力が炸裂する。
 それを見て取ると、少女はすぐに踵を返した。全力疾走。"飛ぶ斬撃"を置き去りにする。少女は、進行方向にあった壁に足から着地した。壁がクレーター状にくぼむ。
 少女は深く足を屈伸させる。そして、できたクレーターの縁に足裏を滑らせ、壁と水平に跳ぶ。
 "飛ぶ斬撃"はビルを両断した。その時に、少女はビルの上方へ。
 "飛ぶ斬撃"から受けた負傷で、ビルは蒸発した。その寸前、少女はビルの屋上を踏み込み、自身の蒸発をなんとか回避する。
 少女は別の、他とは少し低いビルの屋上で、大剣士を見据える。
「……黒い弧は、大きすぎて、こちらのどの一手でも、相殺どころか、弱体化すらままならない」
 そして、少女はクスリと微笑む。
「だがチェックメイトだ」
 その瞬間、大剣士はスローイングナイフに貫通された箇所を中心に空間に縫いとめられ、束縛された。
 スローイングナイフが"自在に扱われた"のだ。大剣士は回避の行動を奪われた。
 次いで、少女から真正面に放たれたライフルじみた弾丸が五つ。
 先ほど述べたとおり、大剣士には回避ができない。だが腕が自由であるままなのだ、迎撃ができぬ道理はない。
 再び絶望的な何かが、一筆で描かれた――それは迎撃の役目を、かるくやり遂げる。
 しかし、対消滅の先に、大剣士の対峙すべき者はすでにいない。
 その意図するところは簡単、フェイントということだ。
 得物を振り切った大剣士。その背後。広げた翼をはためかせるように、少女が放つ。放つのは、片手に三本ずつ指の又に一本ずつ握る今までどおりの"強力ごうりき"
 そして、少年の痩身に、六つの穴が穿たれた。




『気分はどうですか?♪』
 確認を求めるように、天使が私を見てきた。
 下を見れば、敵の人影がゆっくりと倒れてビルから転げ落ちるのが見えた。
 摩天楼の天辺にいる私は、堪えきれず、笑みを満面に浮かべ空を仰いでしまう。
 嘘のように身に滾る力。嘘のように冴えた思考。まるで夢を見ているかのようだ。そう、中心である私すらも変革され道化師となった、道化師しかいない夢だとしたら全て説明がつく。
 人間離れした身体能力が全部嘘で、それを自在に駆使したというのも全部嘘、全部が全部夢であれば理解できる。
「最高だ――」
 しかし、この快感は嘘ではない。
 故に私は、またこの夢を求めてしまうことだろう。
 理解できずとも構わないと、柄にもなく本能的になってしまうことだろう。
 クリパとは現実逃避の次元が違う。
 ハマっちゃった。
PR


この記事にコメントする
Name
Title
Font-Color
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret
この記事へのトラックバック

  この記事にトラックバックする:


←  無題    HOME    無題  →



Copyright (C) (愁) All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog | Template by 紫翠

忍者ブログ | [PR]