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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁

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11.


 騎神は基本的に昼には行動しない。短期決戦は夜となる。
 数瞬を待って、呼とも吸ともつかぬ息の声を発する。
 ――一足で、夜空を眼下に。
 女神は手を伸ばした。憤怒の末の、渇望だ。付け入る隙の無い強力さに女神は惚れる。神となる前に神と思えたもののように、神となったあとに神と思えたものを。だが今回は与えられるものではない。ならば勝ち取らなければならない。
 女神の信念においては、伸ばす手が空をきることがあってはならない。たとえ有無という次元の壁があっても、それは変わらない。
 明け渡せと、剥き出しの狂気を刃にかえていざ。

 騎神にとっての平穏は、急襲によって崩れ去った。
 急襲の形はドーナッツ。中心に騎神が位置するのは言うまでもなく、逃走進路もいうまでもない。
 騎神は二つのうち、下方への落下を選んだ。攻撃範囲からぎりぎり逃れる位置で停まるのに、勢いを殺すというモーションがあったかは定かでない。
 その眼中には、数度となく渡り合ってきた障害が。
 ――炎の龍に包まれ、打突せんと襲来。
 騎神はついに防御した。必殺に魔女の加護が纏わり付いているのは、それでも止まらない。
 待望された結果がついに成立する。凌駕は為された。
「シャーマニズム万歳だな……ッ!」
 よって期待は跳ね上がり、貪欲に願い二撃目へ。
 斬撃となる力の性質を破壊力に変換するシステム――エイドも持続している。未だ効れそうにない。
 魔力にものを言わせてざくざくと切り刻みにいこうと、女神は【魔剣】と呼称すべきバルムンクを酷使しはじめる。
 バルムンクは一振りされるごとに、爆発を生む。当たっても、当たらずとも。しかし斬撃という凝縮状態よりももっと、騎神の装甲を傷つける力に乏しい。エネルギー量は同じで、ただ放散型になったというだけなのだから、当然だろう。
 あるのは、物を動かす力のみ。
 ダメージは無くとも、移動の自由を略奪される謂れがないので騎神は。
 ――爆発には爆発を、というように嵐で抗戦。
 その一撃の余響すら掻き消えた刻、女神と騎神は互いを睨みあっていた。
 いや、女神の攻撃はすでに放ち終えられていた。
 常に抜刀されていた刀身が、嵐のうちに居なくなっている。
 本来ありえぬそれは、摩訶不思議。だが成立する条件は満たされている、魔女とその恩恵が此処に存在するが故に。
 地響きという尾を引いて、騎神の背後に爆発が起こる。
 騎神の後頭部にめり込んだバルムンクの刀身から、斬撃があの新たな形で放出されたのだ。
 騎神の逃れようとした事態が加速する。間髪入れずに騎神へ殴打をお見舞いした女神。その手にも魔法がコーティングされていたのだろう、殴打は爆発と化して騎神を強行する。
 爆発力の尽きた先は、ただの夜空とは言いがたい。なぜなら、女神がしてやったりという風に微笑んでいるから。
 大綱はその女神。行使する者はその好敵手。
 肩を並べるなど夢でも在り得ぬと互いに思い合ったことだが、歴戦の戦友のように鮮やかな連携であった。結果、成り立つ。
「作戦通りに誘い込んだわけだけど、果たしてこれで終わりだろうか」
 総計、十億七千三百七十四万千八百二十四条。それは、各々は綱。全貌は檻。
 騎神の装甲がずたずたにされていて、一箇所も穴のない檻を高速で通過したのだと物語る。それだけの代償で逃亡できたなら、まだやさしい結果だ。だが現実は苦くも、捕獲だと述べる。
「否、初撃が済んだだけだよ」
 高速――女神に追いすがることを許さぬような騎神自身の速度に匹敵する推進力ばくはつ――それが威力に肩入れすれば、『兵団』ですら起こせなかった奇跡を起こせる。それが初撃に限る奇跡かといえば、そうではない。
 『兵団』という無限の可能性が唯一の制約、とある方向に直線するポーンの生き様。魔はそれを改変プロモーションしてしまうどころか、あまりに力量が大きいために"必中"を約束することすら可能なのだ。
 魔と武の融合した現在、突き進む先に敵はなし。
「君の協力分、私も頑張ったのだから、君も私の協力分、圧倒的にたのむよ」
 騎神を誘い込んだ直後に檻の"隠蔽"が解けたが、実は夜闇にまぎれたままでも一向に構わなかったのだ。女神の要求に応えるため、エフェクトを補強するのに"隠蔽"の効力が無くされたといっても過言ではない。
「魔女」
 魔の伴奏に武が舞踏する。指揮者の魔女が"隠蔽"を解き、遥か大空からその舞踏会を見下ろす。
 女神と魔女の笑顔は似ていた。


「すぅぅ――ばらしいィッッ!!」
 騎神という超常的存在は、作られたものだ。
 それの創造主であり未知おとを初めて解明した人間、探求に心奪われし博士、その枯れ木みたいな老爺は頭上で催されているダンスパーティに昂ぶっていた。
 仕方ないだろう、最強最極と自負できる完成品が敗退しかけているのだから。片腕の肘から先に装着されたきょ"グラムカリバーン"はこの世のものならなんでも壊し、音質も高純度の超圧縮濃度を誇るから同種でも歯が立たない計算、のはずだった。人間で皮膚に相当する騎神の装甲は核レベルのエネルギーの照射では傷一つつかず、より強大な力の有力体に凌駕されそうになったとしても両肩に背負う超石"カイザーコア"から通常の二倍に相当する音力が領域上に引き出せるため不滅だけは絶対的に成立する、そのはずだった。
 しかし不良があったなどという事実は、プライドの撃滅に繋がらない。いわば火に油を注ぐようなものだ。
「ザキラ(The killer)。早く負けるのデェス! 私を第二の研究に着手させるためェェぇに、一区切りをみせつけなさぁぁぁぁっっっっい――」
「あの教授を連想した。どの教授かはアレなんで言えないが」
 叫びを聞きつけたか、老翁のもとに降り立つ者がいた。
 女神だ。騎神ザキラと舞踏する権利を好敵手に明け渡し、そのままこの場所へひとっ飛びしてきた。随分、余力があるようだ。前回までとはやはり違う。
 老翁は昂揚をサッと静めた。だが、女神に恐怖している風はない。無感情にじっと見つめているだけ。
「……グゥゥッレイトな追加モジュールを閃いたので、はやく研究にもどりたぁイ。音学とも呼称すべぇきこの超スペシャル科学なスキルゥ! きっと計画以上の結果製品を実装できるでショウ!」
「いや、グゥレイトは前世紀のネタだけどね……今はハイパーバズーカだとか、射線変更できるゲロビとかが主流だよ」
「しかぁし夢は消、え、ぬ!」
「とても正しい意見です。そんけーします」
 女神は口調を改め、姿勢をキチッとした。敬礼までした。
 その豹変っぷりに、老翁が眉をひそめ――親指をあげた。
 意思疎通が完了した。それどころか、魂が共鳴していた。
「あの音学の結晶をぉぉぉ、破壊しデストロイ削除リセット消去ぉ! おっけー?」
「べりーおっけぇ」
 老翁が叫び、女神が応じる。
 女神は戦場へ舞い戻っていく。
 それまでより幾らか力の入った跳躍だった。


 隅さえ残さず、くまなく刃が及んでいる。
 その矛先は舞台のもう一人の役者、ザキラに向く。神のように圧倒的だったザキラも、今となっては翻弄の境地に立たされている。加虐的に甚振っているのは、作戦か指揮者の性質か。
 一方的な殺戮劇に、変化が訪れた。言葉通り。
 変化――刃の陣形の一角を消去し、ザキラへの一本道を創造し、突き進んでくる其れは女神。
 魔女は指揮を一気に倍の数に増やす。そのうちの幾条かがザキラに最後の一撃を打ち込まんとし、より条数の多いものが束となり龍のようになり女神を屠りに向かう。
 だが間違えるな。それは魔女の為す魔ではなく、武だ。
「――っ」
 女神が願うと同時、武の龍が掻き消えた。女神は加速し、剣先をザキラへ向け構える。突進力に身を任せ単調に突き込む算段なのだ。
 それも、魔女がザキラに負わせてきた武を『封結』させているからこそできる業。
 打突はさらに炎龍を纏うことで強化される。その女神の一撃は、総てのエネルギーをザキラに注ぎ込む。
 許容を超えたザキラの体が熔岩に溶かされるように瓦解した。


 "カイザーコア"がぽろりと宙に投げられる。それを引っ掴んだ女神は飛び退いた。
「くぅ、まさか魔法のコーティングを解かなかったのにこんな訳があったとは……」
 女神が抱えているのは、一つだけ。もう一つは、突然女神に牙を向いた炎龍が咥えている。
 炎龍が泳ぐ先で、魔女が笑っていた。
 "カイザーコア"を手に取った魔女は、迷うことなく大口をあけて"カイザーコア"を喉奥まで押し込んだ。
 そしてゴクリ、と飲み下した。
 "シ"の濁った音色が鳴響した。
 ――刹那。
 光炎に見紛うほどの共鳴が起こった。
 もう一つの"カイザーコア"は透き通った"ソ"を鳴らす。全然別の存在だが、両者は人工的に同一化されていて、今では一個の存在だ。分離しても互いに引き合うのも道理。
 突然の運動力に、女神は手放す程度で済んだ。だが、魔女にいたっては体調を急変させた。
 嘔吐を堪えるように口元を両手で押さえ、四つん這いになるまで身を折る。目を見開き、泳がせ、ぶるぶる震える。
 心を折って、吐くような事態には至らない。凄まじい精神力だが、魔女の体が先に屈服してしまった。
 嘔吐。まず、飲み込まれたばかりの"シ" その次に消化物と胃液と血とにまみれて"ファ"と"ド"
 つまり魔女は非力な人間へ逆戻りしたわけだ。女神が注視する中、魔女――チョコ・L・ヴィータは血の花とともに地上界へ落ちていく。
「無言無印で圧倒的な奇跡を起こす超越者が、こんなところで呆気ない終わりを迎えるとは。
……ま。またひょっこり顔を出してくれるんだろうね」
 女神は魔女の骸を見送り、前を向いた。
 そこに再臨したザキラを――音源が倍化したために増築をおこなったその騎神の新たな姿形を――目に留めた。
 摩天楼をつくる超高層ビルと同等はあるだろう、その巨躯を。


「騎神の身の丈からするに、迫撃をされようものならこっちは原型を残すことすらできないよねぇ」
 女神は決心した。そしてバルムンクを垂直に構え、念じる。
 応えるのは内なる力。秘めし第三の刃。形は、今決断され、成立する。
 必要なものを補うような――必要なものとはすなわち、迫撃を掻い潜るような速度と、この状況を打開する攻撃手段。
 だが刃は一個しかない。四個も持ち合わせる敵にこれだけでは、破れる計算になりようがない。故に単純な形は最も駄目だ。計算という次元を飛び越える、『兵団』に類似したような何か。
 数瞬も経たぬうちに、成立した。
 騎神の光無き闇の色から、ヒントを得たのだろうか――第三の刃は、至高の光アーリアルと似た聖なる祝福を醸し出していた。
 まるでプリマベーラに咲く一輪の花のよう。永い日のように緩やかに動けば、次第に緑の濃さを増す木々をクスクス微笑ませる暖かい陽射しと春一番とを発ち生む。
 "ガブリエルの翼"は生を受けた。
「『龍大撃砲ヘルーク』」
 直ぐさま命を受け、技は炸裂する。
 二条、騎神ザキラに直進する。その二条は太陽の光を翼の面で跳ね返したような、輝く白い煙を噴きだしたようなもので、力強さは微塵も感じられない。
 しかし飛竜のブレスの模倣にして発展技、唯一の攻撃法にして瞬間的に大ダメージを与える最大の奥義なのだ。
「――っ!!」
 『龍大撃砲』の照射は、絶え間ない多段の直撃音と、キャタピラが虐げたような破砕音とを伴って、ザキラの装甲を剥がし取っていく。
 レーザーのような一個の貫通力でも一個の熱エネルギーでもない。構造は『兵団』に酷似する。そういう意味でも、発展型に位置する。
 ザキラもやられっぱなしではない。高速で腕を振るい、女神を叩き落さんとする。『飛弧』と比べるまでもないほどに、大きい。射程外に逃れるなど不可能な素早さもある。
 だが、それを上回る速度を女神は有している。だけでなく、威力を代償としていないために、蝶のように舞うだけでは終わらない。
 "ガブリエルの翼"の羽ばたく音が一つ、その直後にザキラの頭上へ移っている女神は蜂のように刺す。
 ――まるで大群の蜂のように、刺しまくる。
 『龍大撃砲』の超多段ヒットが炸裂を止めない。限りある防御力など、世界の消滅するその日までに削がれ切ってしまうだろう。
「木端微塵にしてやんよッ」
 ザキラが回避行動に移らんと力み、女神がそれを追尾しようと力んだ、
 その矢先、大空を劫火で焦がしながら突き進む二つの鉄槌が――
 グシャリ。
 と、ザキラの胴体に、風穴を開ける勢いでぶつかった。
 女神は追尾をやめ、今の位置よりさらに上空へ緊急回避し、見る。そして目を真ん丸くした。
 鉄槌の正体がロケットパンチだったのだ。
 ロケットパンチの五指がザキラ内部へ食い込んでいく。ギィギィと、金切りな悲鳴が轟く。そして終いには――パックリと、上半身と下半身が分離した。
 乱入してきた一撃に、ザキラがあっという間に昇天してしまった。
 女神が摩天楼に目を向けた。立ち並ぶビルに混じって、それは居座っていた。
 腕のない巨大ロボ。
 それは真っ白い光の灯る双眸でザキラをじっと見つめている。
 ――二つは同時に、霧のように掻き消えた。
 ザキラの方には触れられない珠が三つ残った。
 女神は漁夫の利を得たのか、否、
「これも始まりか。終焉の」
 女神は片手に"ソ"を掴み、もう片腕に"シ"と"ファ"と"ド"を抱えている。
 つまりリーチ。コンプまで、音はあと一個。


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