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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁
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「ジョーカーの行方はフィクションと書いて掌編と読む書物であり実在する人物戦略駆け引き犯罪方法とは関係ありません。以上!」
○ ○ ○
「だぁかぁらぁっ!」
バンッと机を叩き、一方(男)が立ち上がる。
「もうっ、話しになんないわ!」
それが引き金となったかのように、もう一方(女)も立ち上がった。
最初に立ち上がった者のほうが拳を固め、飛ぶ唾も気にせずに言い連ねる。
「教室で女子相手に脱衣麻雀してもいいだろ!? 未成年じゃあるまいし!?」
「高校生はれっきとした未成年よ! それともなに? あんたはダブるもトリブるもこえてフォーぶってたりするわけ?」
図星を突かれたかのように半歩退く彼に、クラスメイト(男女)の総意はまさに憐みといっていい。
苦渋に満ちた顔をした彼だったが、何かに思い至ったようで、すぐに余裕ある笑顔を修復する。彼はタフらしい。
「その造語はあまりにもアホ丸出しだぞ!?」
「人の揚げ足とんないでよっ、この変態男!!」
してやったりというような表情で人差し指を彼女に向けた彼は、某体がゴムのように伸び縮みする方がボスな海賊一味の料理人サンジ真っ青の蹴撃を受け吹っ飛ばされた。
クラスメイト(席順は嬲嫐)は思った。彼は死んでしまった、某家族アニメ版9話の風子のように清く正しくでも春原のようにそのときだけ良いやつ仕様でもなく、醜い感情に従ったせいで。
そうして、クラスメイトは思い至った。全然悲しくないな、と。
「……ふ……フフ…………」
だが、彼は生きていた。
「フハハハハハハハハハハ!! ぬるい、ぬるいぞみ――」
「なら本気で蹴るからねっ」
「グハッ!?」
そして、彼は発言という選択肢を間違えた。
いや、彼が彼である以上選択肢の行方は総てバッドエンドなのかもしれない。
まあそれらはともかく、選択肢をまたも選び間違えた彼はまたも血しぶきの水溜りをつくりそうになったわけだ。
だが、彼はまだ懲りなかった。執念深く、どこまでも馬鹿なのが彼である以上、馬鹿の代名詞は俺だと自分から宣言しなくなるまで彼は彼女に挑み続ける。
「ったく……おい、お前もそろそろ解説やめて参加しろよ」
「ナレーションに徹したいので、丁重に断らせていただく」
「おい!?」
不満げに俺に対しても威嚇の表情(猫が気を逆立てるみたいに)をつくる彼に、俺は拳をお見舞いしてやった。
片頬を押さえ、堪えきれなくなったように彼は叫ぶ。
「親父にも殴られたことないのに!!」
「シラネぇよ」
最小限の言葉でそれを左から右に受け流し、俺は彼女に向き合う。
……いうなら、チビマリオでクッパと戦う(しかも地面では三つくらい緑甲羅が右往左往している)ってところか。
正攻法では勝てない。だが、ちょっと突き方をかえれば攻撃力や図体の差なんて無関係にできる。
……まぁ、二対一でいくから手伝えってのに承諾しちまったからなぁ。
俺はしぶしぶ『秘策』をポケットから取り出した。
「なっ」
サッと青ざめる彼女に、おお効果的面と思う俺。
「結構相手にはお熱なようじゃないか。青春はいいね、アッハッハッハッ」
「……ク」
位置的に『秘策』が何か見えなかったらしい彼が、前に乗り出して俺を振り返って酷くブサイクな顔をした。そしてその後に俺へ哀れむような目を向けてきたが、心の其処ではグッジョブと親指を突き上げていると俺は確信している。そう、誰しも心に一欠けらでも闇は持つものだ。やっぱクリアの世界は必要だよな。でもダークネス系統はレッドアイズ系列ぐらいしかかっこよくないんだよな。
「で、何か言いたいことはないか?」
「…………な、なんのこと?」
「とぼけんなよ。ひとつくらいはあるだろ?」
「……」
「素直になれよ。俺は寛大な男だ。どんな言葉でも受け止めれる自信がある」
綺麗な笑顔を浮かべてみた。引っかかってくれたようで、彼女は覚悟したように一呼吸した。俺はニヤつきたくなるのを押さえ込んで聴覚を研ぎ澄まし、心の録音スイッチをオンにした。
彼と俺と、クラスメイト(無情にも皆)が注目するなか、彼女はついに口を開く……
「違うのよ。私が悪いんじゃないの。いうなら勉強の参考書を買いに本屋へいったら偶然にも悶々とした魅惑の本を見つけてしまいある意味参考にしまくる書物を買ってしまった男生徒の立ち位置なの。仕方ないっておもうでしょ。だってほんと魅力的だったんだもの。大人チックで自分を変えられた気になれるんだもの。誰もが夢見ることだし私もその例外じゃないんだから問題ないと思うわけよ。というか人として大事にすべき欲望なはずだし、問題ないというよりかは悪いと咎められるはずのない感性なはずでしょ。私はそれに則ってちょっとホストクラブの男の子とラブホに入っただけで、不純だけど不純じゃないとおもうの。こういう話は難しい範囲で到底この場では語りきれないとおもうわけよ。そもそも夜の街がいけないのよね。なんでああもカッコイイ人が多いんだろう。そう、私はちょっと芳香に惑わされただけなの。ちょっとした出来心で、だけど誰にも迷惑かけないわけだしそりゃみんなに知られるのは恥ずかしいけどでもほんとは咎められるべき事柄じゃないとおもうの。イブが果実を食べちゃったように私もヘビという宣伝のイケメン男性に騙されただけなの。何もやましい気持ちがあったわけじゃなくてただあの人が話をしたいっていうからちょっと二人で話せる桃色の世界に来訪しただけでいうならいきなり転入してきた生徒が友達ができなくて困っているところを助けてあげる委員長な気分だったの。そう、すべては良心のお導きなのよ。だから咎められるべきじゃないしほんとなら尊敬されたりすべきことなんだわ。うん絶対そうよ、うんうん」
「で、つまり?」
長々と言い訳した彼女を見逃したくもなってくるが、おしくも俺は悪魔な男でそんな甘さは持ち合わせていない。
そう、いうなら某神人やら閉鎖空間やらの設定がでてくるなんちゃらハルヒの立場に俺が立たされたとしたらオープニング直前の選択肢どれ選んでも世界破滅くらい為してしまうのだ。どうだろ俺、凄いだろ俺。もっと褒めてくれていいぞ。できれば現金で。
「……負けを認めればいいわけ?」
ついに折れ、弱い声でそう尋ねてきた彼女。俺の隣のやつが変な顔でもしたのか、悔しそうに下唇を噛んで俯いてしまう。
決着。そう確信し、俺は天使と悪魔の両方を演じる段階に計画を移行させた。
勝ち誇ったようにガッツポーズしていた彼に、俺は『秘策』をひらひらと振ってみせる。
「お前さ、これを幾らで買ってくれる?」
「……へ?」
すっとんきょんな声をあげる彼に対して、彼女はハッと顔をあげて目を見開いた。
あちらさんは理解したらしい――そう、俺の悪魔っぷりを。
「100円未満でお前に売ろうとおもうんだが、それでいいか?」
「え? ああ、うん、それでいい――」
「ちょっと待って」
食いついてきた。俺はそう思い、彼とともに彼女へ顔を向ける。
悪い笑みを浮かべる彼女は、言った。
「……私は500円でそれを買うわ」
周囲がざわめく。
どうやら周りは理解したらしい。あとは、この場の重要役者である彼のみが覚れていないだけ。恐ろしい天然。いつも変なことでは鋭いというのに――俺はわざとらしく言ってのけた。
「おおっ、500円かぁ。そっちのほうが得だし、そっちにしようかなぁ」
「なぬぅ!?」
本気か、と目で訴えてくる彼。マジとかいて本気だざまぁみろ、と俺は目で嘲笑い返す。
――彼は、俺の『秘策』がないと勝てない。いわば、この『秘策』は彼女に対するジョーカーなのだ。
今回の口論は「脱衣という卑猥」に「ホテルでどうちゃらこうちゃらという卑猥」をぶつけることで相手をぐぅの音も出せないようにしたが、この『秘策』はそれ以外にも有効活用できる。つまり『秘策』が彼に渡ってしまえば、彼女は不良でエロ親父でロリコンショタコンの彼を野放しにせざるを得なくなるのだ。それどころか、彼女自身がなんらかの破廉恥をされる場合もある。
だから、彼女は俺を買収しにくるのだ。
彼に『秘策』が渡らねば、これからも彼という悪は正義に負ける。負け続ける。ぶっちゃけ彼が彼女に勝てる見込みは微塵もない。
「なら、俺は600円で買う!」
だから、彼も負けずに俺を買収しようとする。
予想通り――俺はほくそ笑んだ。彼に頷き、彼女に目を移す。
「700」
何を言わずとも簡潔に言い放つ彼女。俺は心の中だけで微笑みを酷く強くした。
「800!」
「900」
「950!」
「1100」
「1300!」
「1800」
「3000!」
桁の跳ね上がりが物凄いものとなっていく。唐突に口を閉ざした彼女を見て、彼がえ? と声を漏らしたあとフフンと鼻で笑う。
もう終わりか。と俺も少しばかり拍子抜けした。もっと掛け金は上がると思っていたのだが、紙一枚程度にその額は一応美味しい。これで妥協してもいいなと、少し前向きに考える。
だが、その判断は間違いだった。
「……10000」
「へ?」
聞き間違えたと思ったのか、彼が声をあげ目を丸くする。
律儀にも、彼女は言い直した。
「私は一万円でそれを買い取ろう」
なんとなく、
彼女の瞳に宿る"光"は俺に似ていて、だけど俺以上に強い"光"なんじゃないかって、思えた。
「……マジ?」
次の桁を発しない彼。俺は顎を撫で、彼女へと歩み寄る。
「それじゃ、これはお前のだな」
一瞬だけ彼女へと見せびらかせ、すぐさま俺は『秘策』を己の背後へ回す。
何も持っていないほうの片手を差し出した俺の意図を覚り、彼女はスカートのポッケから財布を取り出した。
ボトボトと落ちてくる札と銭。鷹を凌ぐ眼力でそのすべてを把握し、合計――ピッタリの額だった。
……どうせなら札一枚で払ってほしかったが、まぁいい。
グッと握りこみ、背後に回した手と前後を交代する。『秘策』を人差し指と親指で摘むだけにしたところで、彼女がバッと『秘策』を奪い取ってきた。
少しでも人目に晒される状態なのが気に入らないのだろうか……いや、一応俺と彼と彼女にしか見えはしないだろうが、不安いっぱいなのだろう。実はそういうところが可愛い子だったん――
「……物さえ確保すれば、あんたもボコられる対象なんだってわかってる?」
「ハッ。お前、ジョーカーが一枚だとでも思ってるのか?」
般若な表情にひぃぃぃと後ずさる彼と違って俺は策がある……もうすこしくらいは、彼にも男らしくなってほしいなオイ。
「俺は一万円で満足する男じゃない。しゃぶりとれるだけしゃぶりとる、ハイエナだ」
俺の服の三箇所に『秘策』と同じものを仕込んでおいたのだ。
ぬかりはない。そう、俺は悪魔だ。
「な、なんだってそこまで……」
「知りたいか。そうだよな。よし、教えてやる。ぶっちゃけ今月の食費がヤバイんだ」
ハッハッハッハッ、そう俺に悲しそうな目を向けるなよアホ面野郎が。
まあ、仕方ないよな。天才とは異端されちゃうもんなんだよなぁ。うんうん、仕方ない仕方ない。
「っというわけで、とっておきのスクープ写真二枚目を――」
「そんなもの、どこにあるわけ?」
余裕ある笑顔で両手をひらひらと振る彼女。負け惜しみ。いや、それ以上の何かがあった。負け惜しみでない何かが、彼女に不敵な笑みを浮かべさせている。勝利を確信させている……俺はそう確信できた。
なぜなら、三箇所以外もくまなく探したというのに、どこにもなかったからだ。
「……」
空が青いのはなんでだろう。
まあ、見えてるのは白い天井なんだけど。
「覚悟、できてる?」
「……もうどうにでもしてくれ」
瞬速で俺の手から一枚目の『秘策』をとったときにそれ以外も掠め取られた、という以外考えられない。ありえない。しかし現実がある。理屈などどうでもいい。すべては結果だ。
俺は、抵抗なく彼女のとび蹴りを喰らい視界を黒く染め上げた。
――訂正。
女は悪魔だ、経験をもって力強く断言する。
……もっとも、訂正できたのはそれから意識がもどった数時間後なんだけどな。
+おまけ
俺はパソコンにも『秘策』を写し取っていた。
カチッカチッとデスクトップ上のアイコンをクリック。思わず口端を歪めてしまう。
女は悪魔だ。だが、男も悪魔だ。つまりはそういうこと。
「次タカるときはネコミミでも付けさせようかな……」
そう思い、今日のところはいつもどおりの萌え画像観賞でもしようかと思い、ネットから落とした某家族やら人生やらの英単語アニメの画像集ファイルを解凍し忘れていたと気づく。
「フンフフンHUNN☆HUNN~♪」
手際よく解凍の指示をいれ、あとは待つだけとなった。
ちょっとコーヒーでも入れてこようかなと立ち上がり、俺はパソコンの前から離れる。
……解凍した画像ファイルにウイルスが混入していると知ったのは、美女が魔女のリンゴを食べてしまったあとのことになる。
○ ○ ○
「だぁかぁらぁっ!」
バンッと机を叩き、一方(男)が立ち上がる。
「もうっ、話しになんないわ!」
それが引き金となったかのように、もう一方(女)も立ち上がった。
最初に立ち上がった者のほうが拳を固め、飛ぶ唾も気にせずに言い連ねる。
「教室で女子相手に脱衣麻雀してもいいだろ!? 未成年じゃあるまいし!?」
「高校生はれっきとした未成年よ! それともなに? あんたはダブるもトリブるもこえてフォーぶってたりするわけ?」
図星を突かれたかのように半歩退く彼に、クラスメイト(男女)の総意はまさに憐みといっていい。
苦渋に満ちた顔をした彼だったが、何かに思い至ったようで、すぐに余裕ある笑顔を修復する。彼はタフらしい。
「その造語はあまりにもアホ丸出しだぞ!?」
「人の揚げ足とんないでよっ、この変態男!!」
してやったりというような表情で人差し指を彼女に向けた彼は、某体がゴムのように伸び縮みする方がボスな海賊一味の料理人サンジ真っ青の蹴撃を受け吹っ飛ばされた。
クラスメイト(席順は嬲嫐)は思った。彼は死んでしまった、某家族アニメ版9話の風子のように清く正しくでも春原のようにそのときだけ良いやつ仕様でもなく、醜い感情に従ったせいで。
そうして、クラスメイトは思い至った。全然悲しくないな、と。
「……ふ……フフ…………」
だが、彼は生きていた。
「フハハハハハハハハハハ!! ぬるい、ぬるいぞみ――」
「なら本気で蹴るからねっ」
「グハッ!?」
そして、彼は発言という選択肢を間違えた。
いや、彼が彼である以上選択肢の行方は総てバッドエンドなのかもしれない。
まあそれらはともかく、選択肢をまたも選び間違えた彼はまたも血しぶきの水溜りをつくりそうになったわけだ。
だが、彼はまだ懲りなかった。執念深く、どこまでも馬鹿なのが彼である以上、馬鹿の代名詞は俺だと自分から宣言しなくなるまで彼は彼女に挑み続ける。
「ったく……おい、お前もそろそろ解説やめて参加しろよ」
「ナレーションに徹したいので、丁重に断らせていただく」
「おい!?」
不満げに俺に対しても威嚇の表情(猫が気を逆立てるみたいに)をつくる彼に、俺は拳をお見舞いしてやった。
片頬を押さえ、堪えきれなくなったように彼は叫ぶ。
「親父にも殴られたことないのに!!」
「シラネぇよ」
最小限の言葉でそれを左から右に受け流し、俺は彼女に向き合う。
……いうなら、チビマリオでクッパと戦う(しかも地面では三つくらい緑甲羅が右往左往している)ってところか。
正攻法では勝てない。だが、ちょっと突き方をかえれば攻撃力や図体の差なんて無関係にできる。
……まぁ、二対一でいくから手伝えってのに承諾しちまったからなぁ。
俺はしぶしぶ『秘策』をポケットから取り出した。
「なっ」
サッと青ざめる彼女に、おお効果的面と思う俺。
「結構相手にはお熱なようじゃないか。青春はいいね、アッハッハッハッ」
「……ク」
位置的に『秘策』が何か見えなかったらしい彼が、前に乗り出して俺を振り返って酷くブサイクな顔をした。そしてその後に俺へ哀れむような目を向けてきたが、心の其処ではグッジョブと親指を突き上げていると俺は確信している。そう、誰しも心に一欠けらでも闇は持つものだ。やっぱクリアの世界は必要だよな。でもダークネス系統はレッドアイズ系列ぐらいしかかっこよくないんだよな。
「で、何か言いたいことはないか?」
「…………な、なんのこと?」
「とぼけんなよ。ひとつくらいはあるだろ?」
「……」
「素直になれよ。俺は寛大な男だ。どんな言葉でも受け止めれる自信がある」
綺麗な笑顔を浮かべてみた。引っかかってくれたようで、彼女は覚悟したように一呼吸した。俺はニヤつきたくなるのを押さえ込んで聴覚を研ぎ澄まし、心の録音スイッチをオンにした。
彼と俺と、クラスメイト(無情にも皆)が注目するなか、彼女はついに口を開く……
「違うのよ。私が悪いんじゃないの。いうなら勉強の参考書を買いに本屋へいったら偶然にも悶々とした魅惑の本を見つけてしまいある意味参考にしまくる書物を買ってしまった男生徒の立ち位置なの。仕方ないっておもうでしょ。だってほんと魅力的だったんだもの。大人チックで自分を変えられた気になれるんだもの。誰もが夢見ることだし私もその例外じゃないんだから問題ないと思うわけよ。というか人として大事にすべき欲望なはずだし、問題ないというよりかは悪いと咎められるはずのない感性なはずでしょ。私はそれに則ってちょっとホストクラブの男の子とラブホに入っただけで、不純だけど不純じゃないとおもうの。こういう話は難しい範囲で到底この場では語りきれないとおもうわけよ。そもそも夜の街がいけないのよね。なんでああもカッコイイ人が多いんだろう。そう、私はちょっと芳香に惑わされただけなの。ちょっとした出来心で、だけど誰にも迷惑かけないわけだしそりゃみんなに知られるのは恥ずかしいけどでもほんとは咎められるべき事柄じゃないとおもうの。イブが果実を食べちゃったように私もヘビという宣伝のイケメン男性に騙されただけなの。何もやましい気持ちがあったわけじゃなくてただあの人が話をしたいっていうからちょっと二人で話せる桃色の世界に来訪しただけでいうならいきなり転入してきた生徒が友達ができなくて困っているところを助けてあげる委員長な気分だったの。そう、すべては良心のお導きなのよ。だから咎められるべきじゃないしほんとなら尊敬されたりすべきことなんだわ。うん絶対そうよ、うんうん」
「で、つまり?」
長々と言い訳した彼女を見逃したくもなってくるが、おしくも俺は悪魔な男でそんな甘さは持ち合わせていない。
そう、いうなら某神人やら閉鎖空間やらの設定がでてくるなんちゃらハルヒの立場に俺が立たされたとしたらオープニング直前の選択肢どれ選んでも世界破滅くらい為してしまうのだ。どうだろ俺、凄いだろ俺。もっと褒めてくれていいぞ。できれば現金で。
「……負けを認めればいいわけ?」
ついに折れ、弱い声でそう尋ねてきた彼女。俺の隣のやつが変な顔でもしたのか、悔しそうに下唇を噛んで俯いてしまう。
決着。そう確信し、俺は天使と悪魔の両方を演じる段階に計画を移行させた。
勝ち誇ったようにガッツポーズしていた彼に、俺は『秘策』をひらひらと振ってみせる。
「お前さ、これを幾らで買ってくれる?」
「……へ?」
すっとんきょんな声をあげる彼に対して、彼女はハッと顔をあげて目を見開いた。
あちらさんは理解したらしい――そう、俺の悪魔っぷりを。
「100円未満でお前に売ろうとおもうんだが、それでいいか?」
「え? ああ、うん、それでいい――」
「ちょっと待って」
食いついてきた。俺はそう思い、彼とともに彼女へ顔を向ける。
悪い笑みを浮かべる彼女は、言った。
「……私は500円でそれを買うわ」
周囲がざわめく。
どうやら周りは理解したらしい。あとは、この場の重要役者である彼のみが覚れていないだけ。恐ろしい天然。いつも変なことでは鋭いというのに――俺はわざとらしく言ってのけた。
「おおっ、500円かぁ。そっちのほうが得だし、そっちにしようかなぁ」
「なぬぅ!?」
本気か、と目で訴えてくる彼。マジとかいて本気だざまぁみろ、と俺は目で嘲笑い返す。
――彼は、俺の『秘策』がないと勝てない。いわば、この『秘策』は彼女に対するジョーカーなのだ。
今回の口論は「脱衣という卑猥」に「ホテルでどうちゃらこうちゃらという卑猥」をぶつけることで相手をぐぅの音も出せないようにしたが、この『秘策』はそれ以外にも有効活用できる。つまり『秘策』が彼に渡ってしまえば、彼女は不良でエロ親父でロリコンショタコンの彼を野放しにせざるを得なくなるのだ。それどころか、彼女自身がなんらかの破廉恥をされる場合もある。
だから、彼女は俺を買収しにくるのだ。
彼に『秘策』が渡らねば、これからも彼という悪は正義に負ける。負け続ける。ぶっちゃけ彼が彼女に勝てる見込みは微塵もない。
「なら、俺は600円で買う!」
だから、彼も負けずに俺を買収しようとする。
予想通り――俺はほくそ笑んだ。彼に頷き、彼女に目を移す。
「700」
何を言わずとも簡潔に言い放つ彼女。俺は心の中だけで微笑みを酷く強くした。
「800!」
「900」
「950!」
「1100」
「1300!」
「1800」
「3000!」
桁の跳ね上がりが物凄いものとなっていく。唐突に口を閉ざした彼女を見て、彼がえ? と声を漏らしたあとフフンと鼻で笑う。
もう終わりか。と俺も少しばかり拍子抜けした。もっと掛け金は上がると思っていたのだが、紙一枚程度にその額は一応美味しい。これで妥協してもいいなと、少し前向きに考える。
だが、その判断は間違いだった。
「……10000」
「へ?」
聞き間違えたと思ったのか、彼が声をあげ目を丸くする。
律儀にも、彼女は言い直した。
「私は一万円でそれを買い取ろう」
なんとなく、
彼女の瞳に宿る"光"は俺に似ていて、だけど俺以上に強い"光"なんじゃないかって、思えた。
「……マジ?」
次の桁を発しない彼。俺は顎を撫で、彼女へと歩み寄る。
「それじゃ、これはお前のだな」
一瞬だけ彼女へと見せびらかせ、すぐさま俺は『秘策』を己の背後へ回す。
何も持っていないほうの片手を差し出した俺の意図を覚り、彼女はスカートのポッケから財布を取り出した。
ボトボトと落ちてくる札と銭。鷹を凌ぐ眼力でそのすべてを把握し、合計――ピッタリの額だった。
……どうせなら札一枚で払ってほしかったが、まぁいい。
グッと握りこみ、背後に回した手と前後を交代する。『秘策』を人差し指と親指で摘むだけにしたところで、彼女がバッと『秘策』を奪い取ってきた。
少しでも人目に晒される状態なのが気に入らないのだろうか……いや、一応俺と彼と彼女にしか見えはしないだろうが、不安いっぱいなのだろう。実はそういうところが可愛い子だったん――
「……物さえ確保すれば、あんたもボコられる対象なんだってわかってる?」
「ハッ。お前、ジョーカーが一枚だとでも思ってるのか?」
般若な表情にひぃぃぃと後ずさる彼と違って俺は策がある……もうすこしくらいは、彼にも男らしくなってほしいなオイ。
「俺は一万円で満足する男じゃない。しゃぶりとれるだけしゃぶりとる、ハイエナだ」
俺の服の三箇所に『秘策』と同じものを仕込んでおいたのだ。
ぬかりはない。そう、俺は悪魔だ。
「な、なんだってそこまで……」
「知りたいか。そうだよな。よし、教えてやる。ぶっちゃけ今月の食費がヤバイんだ」
ハッハッハッハッ、そう俺に悲しそうな目を向けるなよアホ面野郎が。
まあ、仕方ないよな。天才とは異端されちゃうもんなんだよなぁ。うんうん、仕方ない仕方ない。
「っというわけで、とっておきのスクープ写真二枚目を――」
「そんなもの、どこにあるわけ?」
余裕ある笑顔で両手をひらひらと振る彼女。負け惜しみ。いや、それ以上の何かがあった。負け惜しみでない何かが、彼女に不敵な笑みを浮かべさせている。勝利を確信させている……俺はそう確信できた。
なぜなら、三箇所以外もくまなく探したというのに、どこにもなかったからだ。
「……」
空が青いのはなんでだろう。
まあ、見えてるのは白い天井なんだけど。
「覚悟、できてる?」
「……もうどうにでもしてくれ」
瞬速で俺の手から一枚目の『秘策』をとったときにそれ以外も掠め取られた、という以外考えられない。ありえない。しかし現実がある。理屈などどうでもいい。すべては結果だ。
俺は、抵抗なく彼女のとび蹴りを喰らい視界を黒く染め上げた。
――訂正。
女は悪魔だ、経験をもって力強く断言する。
……もっとも、訂正できたのはそれから意識がもどった数時間後なんだけどな。
+おまけ
俺はパソコンにも『秘策』を写し取っていた。
カチッカチッとデスクトップ上のアイコンをクリック。思わず口端を歪めてしまう。
女は悪魔だ。だが、男も悪魔だ。つまりはそういうこと。
「次タカるときはネコミミでも付けさせようかな……」
そう思い、今日のところはいつもどおりの萌え画像観賞でもしようかと思い、ネットから落とした某家族やら人生やらの英単語アニメの画像集ファイルを解凍し忘れていたと気づく。
「フンフフンHUNN☆HUNN~♪」
手際よく解凍の指示をいれ、あとは待つだけとなった。
ちょっとコーヒーでも入れてこようかなと立ち上がり、俺はパソコンの前から離れる。
……解凍した画像ファイルにウイルスが混入していると知ったのは、美女が魔女のリンゴを食べてしまったあとのことになる。
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