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~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁
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『夏の終わりに届いたメール』
べつに、そうめんが好きなわけではないが。
これを食える時期もそろそろ過ぎちまうんだよなぁ……と思うと、霧消に食べたくなるもので。
まあ、食べおさめってやつ?
「私に訊かないでください」
ツれない妹様は、そのくせガツガツ食いやがる。なんて我侭娘だろうかと、将来が不安になる。
いや、そのまえにまず彼氏だろ彼氏。カラシじゃない。カラシは十分効いている。ともかく彼氏だ。
「音沙汰ナシすぎるのもおかしいだろ。うら若き青春時代の女のくせにして……本当のところ、どうなんだ。AかBか、まさかCか!? おとうさん、それだけは許さんぞ!?」
「誰ですかあなたは?」
「ひどい。おとうさんと縁を切ってまであの男とくっ付くのね! ひどいわ!!」
「馬鹿やってると、また誰ですかと訊きますよ」
ベリークール。夏でもちょっとキツいくらい。
……音姉がロンドンに行って、純一さんとさくらさんが居なくて、
小恋も初音島から消えてしまった、そんな夏の終わりの直前の日。
「それにしても……暑くて、だるいよなぁ」
「ですです。そこで、ひとつ提案があります」
そうめんを食べ終えたところで、由夢が身を寄せてきた。
ニヤリ笑顔。杉並がまた変なことを思いついたときの悪役面を連想させる。
条件反射で、うげぇと口をへの字に曲げてしまう俺。
「お姉ちゃんもいないことですし、ここはひとつクーラーをがんっがんに効かせてみてはどうでしょう?」
……悪くない提案である。
こうやって流される性質だから、杉並に対してもああでそうなんだろうなぁ。と、麦茶を啜りながら顔を逸らす。
一応、対抗はしておかないとな。音姉に悪いし。
「ねぇ、兄さーん? 夏も終わりなんですし、今日くらい――」
「何かにつけて、夏休み中は結構クーラー効かせてたよなぁ」
夏まっさかりだった頃よりかは涼しいのだからなぁ。
「兄さん、女の子には優しくしないと、恋人さんに嫌われちゃうよ?」
「うぐぅ」
い、いや、惑わされるな。優しいとかそういう問題じゃ――
「……2時間だけだからな。昼だけだからな」
「わぁい。兄さん大好きー」
全く、弱いものである。
どう突けば甘い蜜が吸えるか、由夢もわかってきたようだ。
……そろそろわからせてやらなくちゃ、な。うん。地の底に落ちてしまった兄の威厳が、もう一度舞い上がるときなのだ。
「ってことで、由夢。ネコミミも~どだ」
「誰ですかあなたは?」
もぅ。どこかのポーカーおっさんみたいだと、お兄ちゃんへの字書いちゃうぞ♪
ふと、俺は携帯を取り出した。
思いつきを別の形で実行に移すこととする。
興味を惹かれたのか、由夢がそろりそろりと覗き込んできた。そして、じと目を向けて咎めてくる。
「まあ、彼女なんだし」
大丈夫だろ。
ひととおり文を組み上げて、メールを送信。
……晩くらいには、返ってくるだろうな。
「由夢。暇だし、大富豪でもするか」
「かったるいです。のんびり寝てましょうよ」
そうして俺は、本格的に駄目になってしまった妹君を叩きなおしはじめる。
◇
おせんべいを齧っていた小恋に、義之からのメールは届いたのであった。
どきどき、ワクワク、おそるおそる携帯を操作し、小恋は驚いた。
目を真ん丸くして。
口をおむすびにして。
「……ふぇぇ!?」
――どうしよう。
無茶振りすぎる。無理だ。小恋は泣きたくなる。
しかし、数分もかからずして小恋は現在の時間を確認する。
――やれるだけ、やってみよう。
それで無理だったら、仕方ない。謝れば許してくれる……よね?
夏の終わり。夏休みの課題を丸々残していた学生のごとく、小恋は冷や汗をたらりと流す。
まず、小恋はデパートへ向かう。
知る中では一番大型な。服の品揃えが豊富で、"それ"もきっと置いてくれているだろうと期待が高まる。
「いらっしゃいませ~♪」
「あぅ」
にこやかに微笑む従業員の女性に、緊張し切っている心を刺激されて小恋はオーバーヒート。だがすぐに持ち直し、ぎこちなく微笑み返しながら小恋はとりあえず女性服コーナーの奥へ。
精神状態をある程度安定させるのに数分。小恋は、捜索を開始した。
手の届く位置にあるのはワンピース。手に取って大きさを確かめたところ、どうやら子供用らしい。
どっちにしても、着難いのよね……
自分の胸に手を当て、小恋は苦笑する。
ボタンは付け辛いわ、胸元は伸びてしまうわで、制服でも案外困る方なのだ。
尤も、自分以上の女性を小恋は知っているが……その女性が自分と同じことで悩んでいるところを、見たことがなかったり。
っと、そんなことに気をやってる暇はなかった。
きょろきょろと見回して、この辺りに"それ"が無いことを理解。
探し出すのには時間がかかりそうだ……もしここに無かったとしたら、とんでもないことになりそうだ。
時間をかけて、しかしできるだけ人目に当たらぬようにしながら小恋は捜索を続行する。
"それ"を探しているということがどれほど恥ずかしいか、小恋の中ではそう認識されているらしい。
義之のお願いを断るという考えには至らないようだ――義之のお願いだからこそ、断らずに頑張っているのかもしれないが。
「わ」
成果が上がらぬうちに、小恋はコーナーから飛び出してしまった。どうやら、奥の方を意識してはいたけれど、突っ切ってしまうということは考えになかったらしい。
しかも運が悪いことに、そちらにもレジがあった。小恋の声に気づいて、レジ員がいらっしゃいませーと声をかける。
「あ、あはは……」
「お客様、何をお求めでいらっしゃいますか~♪」
「ふぇぇッ!?」
目の前のことをどうにかしようと、小恋がレジ員に引き攣った笑みを返したその時、隙となった背後から声が届く。幽霊に肩を叩かれたかのように小恋は驚愕した。
振り返れば、満面の営業スマイルを浮かべる女性店員そのに。
小恋はきょろきょろと前後を見比べて、覚った。
……は、挟み撃ち。
何を撃つのだろうか、それは小恋にしかわからない妄想である。
崩れない営業スマイルにプレッシャーをかけられ、小恋は迷う。
要領を得ない捜索の続行か、恥を覚悟してスペシャリストのこの方に訊くか。
「あ……あの……その、ええと」
迷った挙句、後者を選んだ。
小恋は、息を吸う。勇気を注ぎ込んで覚悟を起動し、言葉を舌に乗せた。
――腹に力を込めて、大声で。
それを訊いた女性店員は、一瞬、仮面を剥ぎかける。だがそこはさすがといったところか。すぐに取り繕われた笑顔に、小恋は女性店員が動揺したとは到底気づけない。
「そのご商品でしたら、子供の玩具売り場をお探しになられたほうがいいのではないでしょうか?」
「あ……ああ!」
搾り出した平常な声でのヒント。小恋はぽんっと両手を合わせて、ありがとうございますとお辞儀するとともに踵を返した。
そそくさと歩き去る小恋は、知らずしてその場の者全員に――別コーナーの従業員、それこそ幅広い年齢層の御客にまで、一週間は忘れないというくらいの印象を残した。
小恋にとってこのデパートが『電車で二駅もかけねばならないために半年に一回来るかどうか』という
無事手に入れることができた。
小恋はムフッと顔をにやけさせた。
達成感六割。残り四割は、次なるプロセスへの緊張感だ。
目標を完全達成するためには、小恋は"ある状態"にならねばならない。それは周知されると四十六日は困るものであり、とすれば"ある状態"の不安要素を受け入れるための"ある環境"が必要になるのだ。
それは問題ない、たぶん――小恋は、また多大な時間をかけて家に戻った。
丸時計の短い針は真下に向いている。そろそろタイムリミットではないだろうか。焦らねばならない。階段を昇る小恋も解っているのか、足音がどたどたと大きい。
急いで身を潜り込ませ、ドアを施錠。はあっと息を漏らし、口を結ぶ。
自室は片付いている。特に目に留まるような異質もないし、これで大丈夫だろう。
よし、やるかっ……小恋は"ある状態"になった。
ここまで来れば、引き返すよりかは急いだほうが身のためである。慌てて小恋は携帯を取り出し、何らかの操作をするが、ハッと思い当たることがあって手を止める。
ゆるゆると、小恋の目は自らの脚へ。
――綺麗にしといたほうが、いいよね。
机の引き出しを漁り、ガムテープのように粘着性があるその毛抜き用品を取り出す。美容にも良いという効果があるのだ。効能の凄さは実感済みであり、きちんとしておいて損はないとおもう。
そう判断してから数十分、小恋はそろそろかと思って脚に再び目を下ろした。
全体を覆う、それ。取るときは、結構勇気がいる。非常に痛いからだ。
やるんじゃなかった……義之のばかぁ。
誰もが自業自得と苦笑しそうだ。小恋は取る前から涙目になりながら、おそるおそる手を添える。
勢いよく、剥がした。
「――ッ!?」
反射的にあげられた悲鳴。次の瞬間、ばたばたとのた打ち回る。
駆け巡る痛みの熱を、時間をかけることでなんとか許容すると、小恋はもうひとつに手をかけた。
また悲鳴。またのた打ち回る。また時間をかけて、引き潮まで耐える。
「はぅぅ……義之のばかぁ……」
へなへなとそう呟き、小恋は遂に達成を目前とする。
力尽きかけているのか、携帯を掴まんとする手はなかなか辿り着かない。やっと掴むと、ゆっくりと小恋は立ち上がって、ゆっくりと先ほどと同じ操作を始めた。
裏側のディスプレイが己へ向くようにして、片腕を伸ばす。ピースか何かしたほうが良いだろうかと、小恋が思ったその時、
「……」
ドアを薄ら開けて、怯えるような目で覗いて来ている
目が、合った。
自分が"ある状態"にあること。それはとても恥ずかしいということ。小恋は吟味するように味わって現状を飲み下す。
さぁっと、蒼くなって赤くなった。
「ちょ、ま、これには訳が――」
バタン。
弁解しようと手を伸ばした途端、勢いよく締められた。
一人っきりの部屋の空気が、重い。
だが小恋は知っている。たぶん、家族の集まってる
えぐえぐと涙を滝のごとく溢しながら、小恋は言った。
「義之のばかぁぁぁ!」
さっきと同じ言葉。
籠もる念は、倍増し。
夏の終わりに届いたメール。
それは、はらはらどきどき、波乱万丈で緊迫感超過の大冒険(月島的には)を告げるものであった。
◇
「……ん?」
夕食を二人分適当に見繕った後、なんとなく手持ち無沙汰になって携帯を確認する。
すると、メールが一件来ていた。恋人の月島小恋からである。
何だろう。何かあったのだろうか……それとも、夏休み超終盤の今になって、いきなり
メールを開く。どの推測にも当てはまらない、威力抜群な内容だった。
画像一枚。胸から下が映っていないが、久しぶりに見た私服姿である。紅潮し切った顔に、潤んだ瞳に、
……何これ。
可愛いよ。うん。しかし突発的すぎないか。一体何があったんだ。ってか一体どんな心理状況なんだ。まさか向こうで何かあったのか――
昼間にした会話がなぜか気になったが、思い出せないようなものより悩むべき課題が目の前にある。徹夜で行くか否か。本気で二択を考えて夕食も手がつけられなくなる。
夏の終わりに届いたメール。
刺激的で、妖美で、健気で、
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