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(愁)
~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁

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「全部ハートのキング! ロイヤルフラッシュアタックです!!」
「いや、そんなの無いから」
 全部ハートになってしまったキングをどうしようかと悩む。アイシアの魔法も、無駄なときだけ成功してしまうもんだ。
「これならフォースカードバトルにしとけばよかった……」
「でもそれだったら、スペシャルカードをコンプしたお兄ちゃんが有利になっちゃうでしょ」
 不公平だ不公平だー、とさくらが喚く。うるさかったので、拳骨を落として黙らせた。
 さて、どうしよう。
 とにかく、今日という休みを満喫してしまうのに考える時間が無駄だというのがわかった。考えずに突っ走ってみようとおもう。












「フ……やったな」
 防犯システム度トリプルSの水越邸に不法侵入してみた。
 豪邸としては自然だろう、人より大きな石像が部屋の両端にどっしり構えている。その石像の口からは八方に向かって赤外線が。その石像の目に音波装置が貼り付けられているのも確認した。ぬかりのない防犯だ。雇われている奴が死と隣り合わせと想像して、少し可哀想におもう。
 まあ、どうせいくらでも代わりはいるのだろうが――そう考えると、なにやらイライラしてきた。
「くそぅ。折角だから萌先輩の部屋に忍び込んで寝取っちゃる」
 姉の方をなんとかしたあとに、ボス(水越妹)の攻略開始だ。計画を練って、いざ俺は動き出した。





カチッ






 ゴゴゴ……ッ


 奇妙な音がした。足元に妙な凹みができているのも気になった。何かが絡まってきて両脚が動かせないのも気がかりだった。脳裏で警笛が全開なのが兆しだった。
 生唾を飲み込む――ゆっくり振り返る。
 防犯システム度トリプルSの水越邸。さすがトリプルSだと、感想はそればかりが漏れ出すぐあいだ。









「ありがとう、頼子……じゃなくて、美咲さん。助かったよ」
 ボロ雑巾のように眞子に捨てられた俺を拾ってくれたことに感謝。いえいえと、美咲さんが優しく微笑んだ。
 ああ……周りにいるのがばかりだと、こういうときに安らいじゃうんだよな。
「紅茶に、お菓子でもどうですか?」
「いいね。是非」
「少し待っていてくださいね。今日は、メイドが全員出かけていまして……」
 わざわざ美咲さんに取って来てもらうこととなって、少し恐縮する。
 しばらくはひとりっきりだと、静寂が腰を下ろしてきて手持ち無沙汰になる。どれだけ回数を重ねても気が休まらない『女の子の部屋』に、自然と目が走っていた。
 いやぁ、可愛らしいなぁ……デフォはこんな声。
 次の瞬間、変わる。

  テーブル
   ↓                      
  ━━━━━               ━━━
 ┃       ┃            ┃     ┃
 ┃       ┃ ( ´^ิ益^ิ`)←俺  ┃     ┃
 ┃       ┃            ┃     ┃
 ┃       ┃            ○     ┃
  ━━━━━               ━━━
                         ↑ベッド

 ベッドの脇に、何か白いものが置かれているではないか。
 遠目なので定かではないが……確信に満ちてはっきりこっきり大声で表現するに……
「美咲さんのパンツ」
 俺は頭を抱えた。思考回路がティガレックスを前に肉を焼き始めてしまったハンターのごとく活動しはじめた。
「(美咲さんのパンツ……堂々と置かれている……)」
 誘いか? 戸惑う。頭がパニクる。ええと、こういう場合まずどうすればいいんだろう?
 考えに考えたあげく、俺は決断した。
「……触るか
 手を伸ばした瞬間に美咲さんが帰ってきて、優しい笑みが失われてしまったのは言うまでもない。








 ほかに突っ走るとしたら、やっぱこれだろう。
「美春。バナナ好きか?」
「イエスに決まってるじゃないですか。バナナのためなら脱げるんですから
 愛すべきわんこだった。心の中で全力で貶す。
「うん。おまえの熱意はよくわかった。バナナ美味しいよな。うぬうぬ」
「はい、そうですね。なぜ手を伸ばしてくるんです?
「その手にあるバナナを寄越しやがれぇぇぇぇえええええ!!」
 バレた。舌打ちひとつ、強行策にでる。チャクラを練りこんで掌低だってばよ。
 しかし、避けられた。ひらりと宙を舞った美春が、爆転を繰り出して距離を置いてきた。くそう、無駄にかっちょいい。
「風紀委員をなめちゃだめですよ。バナナは絶対に渡しません」
「もう、いいや。が見れたし」
 ミッションとは別に、良い物をゲットである。心のシャッターを切った映像を永久保存版に変換しつつ、顔を真っ赤にして怒る美春の前から一目散に逃げ出した。







 鬼三匹から逃げるのはつらい。というか反則だった。逃げ切れるはずもなかった。
「朝倉……お姉ちゃんに手ぇ出そうだなんて、良い度胸じゃない」
「ハハハ。眞子くん。きょ、今日も、素晴らしく美しいじゃないか。まな板が輝いているゾ☆
「……思いっきり洗濯してあげる」
 胸でゴシゴシしてもらえるイメージ。しかし現実とはそう甘くなく、また、マイルドでもないらしい。
 眞子が般若だった。逃避経路――目に映る般若が三人になるだけだった。
「これ以上悪いことができないように、腰にあるちっちゃいものを切っちゃいましょうかぁ」
「まぁ。なら、そのちっちゃいものは頼子のご飯に……」
ちっちゃいっていうなよ
 立場もわきまえずに反射的に逆ギレした。ガラじゃない憤り方だった。だからか、効果覿面だった。
 言い過ぎたかとシュンとなる、美咲さんと美春。ちょ、ちょっと、と眞子が戸惑う。
 チェックメイトだと言う風に、俺は眞子の肩をポンッと叩いて、
「こ、コラー! 逃げるな朝倉ぁぁぁぁ!!」
 今の状況にデジャ・ヴを感じた。今の俺の立ち位置は本来なら杉並のものなのに、これは一体全体ということだろう。








 まあ、いろいろあったけどまだまだ休日を楽しんでみようかと思う。




<解説>
 家庭科の課題で、料理しなくてはならない。とりあえず今回は、包丁を持ったときに起きる妙な手の震えを克服できたらとおもう(・ω・。)
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