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~今にも終わりそうな小説掲載サイト~
Author:水瀬愁
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今日は、こちらでは花火大会がありました。16年ほど住んでいながら、8/10だったとは知りませんでした。
……やとの日。銀魂のあれですか、あのチャイナ服の女の子。漢字忘れましたが。
で、テイルズオブバーサスの話。
現在、リオン篇で頑張り中。マリアン覚えたリオンで無双中。バーナーの青い火だ! 格好良い!
このゲーム、偏ってるんじゃないかなと思うんです。
や、アンノウンをためしてないからかもしれませんけどね。なんだか、獅子戦哮あれば勝つるってノリがあるように思うのです。
まあ、マリアンもそうなのですが。敵をバーナー炎のさきっちょに当てるのが楽しいすぎるぅ。(マリアンは、案外、中距離まで伸びるのです)
とまあ、これだけです。複数同時プレイなんざできる性分じゃない(あっちむいてほいもできないよ! じゃんけんに変な物付け足すなよ☆)ので、他にあるといえば小説更新のお知らせくらい。
小説更新しました(テンプレ) 敵さんが変身するシーンの描写に、少し手間取りました。今でも後悔してます。テンポは良くなってるような? クサさがどうしてもぬけない、格好良くはしたいのだけど_| ̄|○
……やとの日。銀魂のあれですか、あのチャイナ服の女の子。漢字忘れましたが。
で、テイルズオブバーサスの話。
現在、リオン篇で頑張り中。マリアン覚えたリオンで無双中。バーナーの青い火だ! 格好良い!
このゲーム、偏ってるんじゃないかなと思うんです。
や、アンノウンをためしてないからかもしれませんけどね。なんだか、獅子戦哮あれば勝つるってノリがあるように思うのです。
まあ、マリアンもそうなのですが。敵をバーナー炎のさきっちょに当てるのが楽しいすぎるぅ。(マリアンは、案外、中距離まで伸びるのです)
とまあ、これだけです。複数同時プレイなんざできる性分じゃない(あっちむいてほいもできないよ! じゃんけんに変な物付け足すなよ☆)ので、他にあるといえば小説更新のお知らせくらい。
小説更新しました(テンプレ) 敵さんが変身するシーンの描写に、少し手間取りました。今でも後悔してます。テンポは良くなってるような? クサさがどうしてもぬけない、格好良くはしたいのだけど_| ̄|○
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21.
桜の花びらが舞い散っている。
ひらひらと、はらはらと、滝か嵐かと見間違うほど群を成して、大陸を渡る鳥達のように一心に。
今度は逃さないと言うように無数に。
「……こっちから出向くつもりだったのだけどね、まさかご足労いただけるとは思わなかった」
神姫が可愛らしい顔に不敵な笑みを浮かべ、言った。だがその頬を汗が伝う。彼女の本心が、仮面から漏れ出しているのだ。
「ところで、その速度は一体なんなのかな?」
風が吹き抜けた。
『万物は時の流れにのっているだろう。言い替えれば、万物はある一定の速度で押されているわけだ。そして視力を持つ生物は、相対速度というものを体感できる。たとえば自分が時の速度に追いつけば、時に乗っているだけの他者との相対速度はあまりにも大きい。そう、他者が止まっているように見えてしまうほどに』
神姫に五個の打撃が打ち込まれた。神姫は何も抵抗できず、それどころか何も見えなかった。
四つん這いで血を吐く神姫へ、風が音をたてた。
『今、時の速度と等しくなって殴ったぞ。格別の痛みだったろう』
「超……こう速、どころじゃ、な、ぁっ、い――」
残虐な音を。
そして、神姫の台詞は最後の一文字が欠けた。超高速どころじゃないな、と言おうとして、力尽きてしまったのだ。
さらに風が吹く。神姫を、この地の栄養にせんとしているのか。
だがその攻撃が神姫に加えられる直前、初めて風が姿を現した。
止められてしまったからだ。
『黄泉』
エスパーダから人にもどりながら神姫の盾となった黄泉が、ミストラルを一睨みする。
ミストラルの攻撃に貫かれているのと反対の半身は、剣山と化している。その多数の報復を受けたから、ミストラルは動きを限り無く抑制されてしまっているのだ。
剣山は瞬く間に増築され、増えた刃が内から射出されて新たな報復にならんとする。
だがそれは、ミストラルが刃の捕縛から抜け出す方が早かったために空を切る。
黄泉はミストラルが再び加速するよりも早く、闇の吐息を漏らした。
それは遠くまで、至る所まで行き届き――ミストラルが加速した直後、無数の爆発を生んだ。
回避できる場所などない、故に必中。尋常でない加速状態にあるミストラルからすれば、爆発力は本来より格段に効く。
黄泉は、爆発の壁の中にミストラルを見る。ダメージが大きくなって、可視までミストラルの速度が落ちてしまったのだ。
そして片手を掲げ、放射状に無数の直線を伸ばす。糸のようなそれは、主の蛇として獰猛に空間を蠢く。
形作られる錐体、それからゆるやかな変形を経て模倣される大海の波、闇色の刃の 大洪水、ミストラルを屠るためだけに作動する大量殺戮兵器。
だが、勇者の血でもない兵器が、魔神に敵う道理が無い。
魔童の泣き声が音楽をぶち壊し暴走する。
喜びに哀しみ、悲しみに慶ぶ、狂気の矛盾という破綻が世界に顕現したかのような崩壊。
これも、ある種の音楽であるのだ。領域をもち、力を有し、主たる神が居る。ただ違うのは、領域内にあるものが切り刻まれるというだけ。つまりここは、処刑場であるのだ。すでに"兵隊"はすべて粉にまで分解されてしまった。
音刃の嵐の中、敵はのそりのそりと魔童へ距離を詰める。同じ神の格たる者にとって、この嵐はそよ風にすぎないのだ。
敵の拳に潰される寸前、魔童の瞳が焦点を結んだ。直後、嵐の一部になったかのような速度で魔童は敵の背へ移る。
それを境に、嵐は統制された。魔童の強気な瞳に、豪快な仕草に、強烈な発声に担われ、一閃という形に凝縮された乱撃。"器筒"の砲撃に劣らない、むしろ対象をより早く 溶潰できる。
敵の表面が抉り取られ、泥のようなものを飛び散らせた。だが一閃が突っ切るより早く、敵の翼が広がる。
そして巨人が雷となった。
その飛行には、威力のないただの轟音が携わっている。
音の存在が、無力な音をわざわざたてる。それが愚かに思えてならないのか、魔童はキヒヒと笑う。
そしてタガがはずれるように掻き鳴らされる、高笑いの泣き叫び。叫喚のような狂喜の悲鳴。
その魔童の泣き声は、敵には効かないはずだった。だが傷痕は装甲が薄くなってしまい、嵐の威厳に逆らい切れなかった。
其にもついに、崩壊がはじまる。この領域の摂理が、やっと当てはめられた。
だが最後の抗いが、魔童を捕らえた。技も何もない、ただ握りつぶすのみの単純な強力だ。しかし魔童が死ねば、領域も摂理も何も無くなるのだから、最早力さえあれば事足りる。
要は、魔童が殺すか殺されるか。総てがこれに限られているのだ。
そしてグエェッと魔童が呻きを漏らした。
滅びのマーチの序曲としては、十分すぎるほどの苦痛の音色であった。
二曲目は、抗いようのない虐待からはじまる。
雛子が巨大蜘蛛に絡め取られてしまったのだ。蜘蛛は、一本の手で"器筒"を玩び、他の総ての手で雛子を弄ぶ。
いや、今はまだ捕獲完了という段階である。弄ぶのは、これからだ。
雛子がもがく。力強いために、蜘蛛の捕縛は一本ずつ解かれてしまう。だが、蜘蛛は一本解かれるたびに一本結び直していく。捕縛が完全に解除されることはない。されど雛子は混乱極まった様子で抵抗し続ける。
雛子の脳裏に浮かぶ、自らの神。その神が敗北したと知れば、彼女は魔童よりも醜く発狂するのだろう。
雛子があまりにも暴れるので、蜘蛛は怒りとともに食欲が湧いてきてしまった。そして蜘蛛は決断し、"器筒"を投げ捨てて早速取り掛かることにした。
どうやらこの蜘蛛は、 生物を食すのが好みのようだ。消耗して抵抗が小さくなりつつある雛子の四肢を抓むと、ギリギリまで引っ張る。
限界が来れば雛子は幾つかに千切れ、食べやすい大きさになる。
雛子の悲鳴が響く。その音楽が、此処の闇黒に活力を与え、主の養分となる。これも一種の食事、言い換えるなら"前菜"だ。
だが何を思ったか、蜘蛛は手法を変えた。とりあえず雛子は一本の手で持ち上げておき、残る手を左と右に適当に配分し、構える。
配分された手の間には多角形の面が出来上がった。"器筒"の砲撃を防いだあの"足場"より小さいが、硬度はまったく同じである。これならば、 どんな不安定な状態 であったとしても、 三角形さえ描ければ 砲撃を防げるだろう。
蜘蛛は二つの"足場"を雛子に押し付ける。プレスするつもりなのだ。
再三の悲鳴。今度は妨げられることなく、最高潮へ。
そして、極限からプツリと事切れるはずの次の瞬間、いや直前に――
ダイアトニック・コードに記されぬ一音が、世界をガラリと変えた。
黄泉が闇になるのと同じ、光への形質変化。
蜘蛛の捕縛が空を切る。雛子はゆるりと、歩をはじめた。コツッと、雛子の歩みで音が立つ。周囲の音を総て吸い尽くし、その一音に束ねたように。
音はこれ一つ。なぜなら、弱き物は強き物に塗り潰される因果であるから。
よって、雛子ただ一人とも言える。
音楽も。不協和音の歪曲など無い、在るのは高らかなファンファーレの愉悦。
蜘蛛にはただ、凶暴なる光の存在としか映らない。
真理を考えるのは――
「命を代償にする者が現れたか」
真理を考えるのは、黒曜の役。
ゴンザレスが眉をしかめるので、黒曜は笑いかけた。
「自分たちの側が火蓋を切ったのではないよ。君たちがはじめるんだ。これにより、戦闘の格が一つも二つも上がる。まさに 生命を削る闘い。それじゃあ、自分たちもはじめるとするか」
黒曜は剣を逆手に持った。これは準備。
「ああ、一つだけ言わせてくれよ。君たちはなってない。音と呼ばれるこの異世界の力は、どんな願いをもかなえることができる力なのだ。もっと強く願えばいいものを――」
目を細めた。これも準備。
目が強く見開かれた。その時にはもう発動していた。
黒曜らの命は、燃え上がる。
その炎は一時天に届くほど伸びる。鋭く薄く強く堅く、炎は限界を突破して結晶化した。
逆手に持たれた剣が柄となる、破壊巨神の巨大剣が構築された。
創造の余韻を振り払うように、黒曜はこれまでとは別格の一薙ぎを振るった。
違いは多数にある。技ではなく力であることとか、避ではなく攻であることとか、究極ではなく創始であることとか。
一薙ぎの斬撃は強力なる余波を飛ばす。目に見えるほどのエネルギー量を擁しし余波。"朱色の 運命" 受けた者はたちどころに死を迎える。死者の輪廻は破壊を期す。
ゴンザレスは驚愕しながらも冷静であった。一薙ぎを飛び越えると、神器を用いてさらに跳躍と推進、さらに黒曜へ拳を叩き込むに至る。
狙ったのは巨大剣を持たぬ方の腕。だが遅かった。
"赤光の太陽" その甲殻は決して崩れぬ宇宙の秩序を内包するからだ。
その硬度に押し負けたゴンザレスは、嘲笑ひとつ分の後に爪牙で屠られん。
だが間一髪、神器が狭間に入り込んで威力を削いだ。ゴンザレスは遠く遠くへ弾き飛ばされるのみで済む。ただこれで、不滅のはずの神器に死が訪れた。さらには、ゴンザレスは不運であるかもしれない。遠くに行ったからこそ、全貌を目の当たりにしなければならない。
進化は止まらぬ。残る"紅月"が虚空より引きずり出された。其は空間を掌り、所有主に天駆ける権利を独占させる。脚という概念を取り去った形状であるのはそのためだ。
これで、揃ってしまった。太陽と月の重なる、太陽と月が共に昇る、在り得ぬような大いなる 刻が訪れる。
強大なる闇と僅かな光の世界。届かぬ果てにのみ希望がある雄大な絶望。
暁に"血染めの汚翼"がパサリと広がる。
世はこの降臨に、沈黙せざるを得ない。
破壊巨神、ここに生る。
黄泉、いや、 魔女は戦闘に全力を注ぎながらも異変に気が付いた。
「…… 神姫?」
愛しき人に起こった異変。
起き上がったことは、僥倖である。黄泉はいずれは負けると痛感していたから。時間さえ稼げば、神姫が覚醒してくれさえすればと、黄泉は藁にも縋る想いで戦い続けていた。
だが黄泉は、僥倖とは思えなかった。異変がおどろおどろしい。その戸惑いが何かに影響するでもなく、神姫は立ち上がることを終えた。
その耳には、雑音混じりの唄声が聞こえていた。
桜の花びらが舞い散っている。
ひらひらと、はらはらと、滝か嵐かと見間違うほど群を成して、大陸を渡る鳥達のように一心に。
今度は逃さないと言うように無数に。
「……こっちから出向くつもりだったのだけどね、まさかご足労いただけるとは思わなかった」
神姫が可愛らしい顔に不敵な笑みを浮かべ、言った。だがその頬を汗が伝う。彼女の本心が、仮面から漏れ出しているのだ。
「ところで、その速度は一体なんなのかな?」
風が吹き抜けた。
『万物は時の流れにのっているだろう。言い替えれば、万物はある一定の速度で押されているわけだ。そして視力を持つ生物は、相対速度というものを体感できる。たとえば自分が時の速度に追いつけば、時に乗っているだけの他者との相対速度はあまりにも大きい。そう、他者が止まっているように見えてしまうほどに』
神姫に五個の打撃が打ち込まれた。神姫は何も抵抗できず、それどころか何も見えなかった。
四つん這いで血を吐く神姫へ、風が音をたてた。
『今、時の速度と等しくなって殴ったぞ。格別の痛みだったろう』
「超……こう速、どころじゃ、な、ぁっ、い――」
残虐な音を。
そして、神姫の台詞は最後の一文字が欠けた。超高速どころじゃないな、と言おうとして、力尽きてしまったのだ。
さらに風が吹く。神姫を、この地の栄養にせんとしているのか。
だがその攻撃が神姫に加えられる直前、初めて風が姿を現した。
止められてしまったからだ。
『黄泉』
エスパーダから人にもどりながら神姫の盾となった黄泉が、ミストラルを一睨みする。
ミストラルの攻撃に貫かれているのと反対の半身は、剣山と化している。その多数の報復を受けたから、ミストラルは動きを限り無く抑制されてしまっているのだ。
剣山は瞬く間に増築され、増えた刃が内から射出されて新たな報復にならんとする。
だがそれは、ミストラルが刃の捕縛から抜け出す方が早かったために空を切る。
黄泉はミストラルが再び加速するよりも早く、闇の吐息を漏らした。
それは遠くまで、至る所まで行き届き――ミストラルが加速した直後、無数の爆発を生んだ。
回避できる場所などない、故に必中。尋常でない加速状態にあるミストラルからすれば、爆発力は本来より格段に効く。
黄泉は、爆発の壁の中にミストラルを見る。ダメージが大きくなって、可視までミストラルの速度が落ちてしまったのだ。
そして片手を掲げ、放射状に無数の直線を伸ばす。糸のようなそれは、主の蛇として獰猛に空間を蠢く。
形作られる錐体、それからゆるやかな変形を経て模倣される大海の波、闇色の刃の
だが、勇者の血でもない兵器が、魔神に敵う道理が無い。
喜びに哀しみ、悲しみに慶ぶ、狂気の矛盾という破綻が世界に顕現したかのような崩壊。
これも、ある種の音楽であるのだ。領域をもち、力を有し、主たる神が居る。ただ違うのは、領域内にあるものが切り刻まれるというだけ。つまりここは、処刑場であるのだ。すでに"兵隊"はすべて粉にまで分解されてしまった。
音刃の嵐の中、敵はのそりのそりと魔童へ距離を詰める。同じ神の格たる者にとって、この嵐はそよ風にすぎないのだ。
敵の拳に潰される寸前、魔童の瞳が焦点を結んだ。直後、嵐の一部になったかのような速度で魔童は敵の背へ移る。
それを境に、嵐は統制された。魔童の強気な瞳に、豪快な仕草に、強烈な発声に担われ、一閃という形に凝縮された乱撃。"器筒"の砲撃に劣らない、むしろ対象をより早く
敵の表面が抉り取られ、泥のようなものを飛び散らせた。だが一閃が突っ切るより早く、敵の翼が広がる。
そして巨人が雷となった。
その飛行には、威力のないただの轟音が携わっている。
音の存在が、無力な音をわざわざたてる。それが愚かに思えてならないのか、魔童はキヒヒと笑う。
そしてタガがはずれるように掻き鳴らされる、高笑いの泣き叫び。叫喚のような狂喜の悲鳴。
その魔童の泣き声は、敵には効かないはずだった。だが傷痕は装甲が薄くなってしまい、嵐の威厳に逆らい切れなかった。
其にもついに、崩壊がはじまる。この領域の摂理が、やっと当てはめられた。
だが最後の抗いが、魔童を捕らえた。技も何もない、ただ握りつぶすのみの単純な強力だ。しかし魔童が死ねば、領域も摂理も何も無くなるのだから、最早力さえあれば事足りる。
要は、魔童が殺すか殺されるか。総てがこれに限られているのだ。
そしてグエェッと魔童が呻きを漏らした。
滅びのマーチの序曲としては、十分すぎるほどの苦痛の音色であった。
二曲目は、抗いようのない虐待からはじまる。
雛子が巨大蜘蛛に絡め取られてしまったのだ。蜘蛛は、一本の手で"器筒"を玩び、他の総ての手で雛子を弄ぶ。
いや、今はまだ捕獲完了という段階である。弄ぶのは、これからだ。
雛子がもがく。力強いために、蜘蛛の捕縛は一本ずつ解かれてしまう。だが、蜘蛛は一本解かれるたびに一本結び直していく。捕縛が完全に解除されることはない。されど雛子は混乱極まった様子で抵抗し続ける。
雛子の脳裏に浮かぶ、自らの神。その神が敗北したと知れば、彼女は魔童よりも醜く発狂するのだろう。
雛子があまりにも暴れるので、蜘蛛は怒りとともに食欲が湧いてきてしまった。そして蜘蛛は決断し、"器筒"を投げ捨てて早速取り掛かることにした。
どうやらこの蜘蛛は、
限界が来れば雛子は幾つかに千切れ、食べやすい大きさになる。
雛子の悲鳴が響く。その音楽が、此処の闇黒に活力を与え、主の養分となる。これも一種の食事、言い換えるなら"前菜"だ。
だが何を思ったか、蜘蛛は手法を変えた。とりあえず雛子は一本の手で持ち上げておき、残る手を左と右に適当に配分し、構える。
配分された手の間には多角形の面が出来上がった。"器筒"の砲撃を防いだあの"足場"より小さいが、硬度はまったく同じである。これならば、
蜘蛛は二つの"足場"を雛子に押し付ける。プレスするつもりなのだ。
再三の悲鳴。今度は妨げられることなく、最高潮へ。
そして、極限からプツリと事切れるはずの次の瞬間、いや直前に――
ダイアトニック・コードに記されぬ一音が、世界をガラリと変えた。
黄泉が闇になるのと同じ、光への形質変化。
蜘蛛の捕縛が空を切る。雛子はゆるりと、歩をはじめた。コツッと、雛子の歩みで音が立つ。周囲の音を総て吸い尽くし、その一音に束ねたように。
音はこれ一つ。なぜなら、弱き物は強き物に塗り潰される因果であるから。
よって、雛子ただ一人とも言える。
音楽も。不協和音の歪曲など無い、在るのは高らかなファンファーレの愉悦。
蜘蛛にはただ、凶暴なる光の存在としか映らない。
真理を考えるのは――
「命を代償にする者が現れたか」
真理を考えるのは、黒曜の役。
ゴンザレスが眉をしかめるので、黒曜は笑いかけた。
「自分たちの側が火蓋を切ったのではないよ。君たちがはじめるんだ。これにより、戦闘の格が一つも二つも上がる。まさに
黒曜は剣を逆手に持った。これは準備。
「ああ、一つだけ言わせてくれよ。君たちはなってない。音と呼ばれるこの異世界の力は、どんな願いをもかなえることができる力なのだ。もっと強く願えばいいものを――」
目を細めた。これも準備。
目が強く見開かれた。その時にはもう発動していた。
黒曜らの命は、燃え上がる。
その炎は一時天に届くほど伸びる。鋭く薄く強く堅く、炎は限界を突破して結晶化した。
逆手に持たれた剣が柄となる、破壊巨神の巨大剣が構築された。
創造の余韻を振り払うように、黒曜はこれまでとは別格の一薙ぎを振るった。
違いは多数にある。技ではなく力であることとか、避ではなく攻であることとか、究極ではなく創始であることとか。
一薙ぎの斬撃は強力なる余波を飛ばす。目に見えるほどのエネルギー量を擁しし余波。"朱色の
ゴンザレスは驚愕しながらも冷静であった。一薙ぎを飛び越えると、神器を用いてさらに跳躍と推進、さらに黒曜へ拳を叩き込むに至る。
狙ったのは巨大剣を持たぬ方の腕。だが遅かった。
"赤光の太陽" その甲殻は決して崩れぬ宇宙の秩序を内包するからだ。
その硬度に押し負けたゴンザレスは、嘲笑ひとつ分の後に爪牙で屠られん。
だが間一髪、神器が狭間に入り込んで威力を削いだ。ゴンザレスは遠く遠くへ弾き飛ばされるのみで済む。ただこれで、不滅のはずの神器に死が訪れた。さらには、ゴンザレスは不運であるかもしれない。遠くに行ったからこそ、全貌を目の当たりにしなければならない。
進化は止まらぬ。残る"紅月"が虚空より引きずり出された。其は空間を掌り、所有主に天駆ける権利を独占させる。脚という概念を取り去った形状であるのはそのためだ。
これで、揃ってしまった。太陽と月の重なる、太陽と月が共に昇る、在り得ぬような大いなる
強大なる闇と僅かな光の世界。届かぬ果てにのみ希望がある雄大な絶望。
暁に"血染めの汚翼"がパサリと広がる。
世はこの降臨に、沈黙せざるを得ない。
破壊巨神、ここに生る。
黄泉、いや、
「……
愛しき人に起こった異変。
起き上がったことは、僥倖である。黄泉はいずれは負けると痛感していたから。時間さえ稼げば、神姫が覚醒してくれさえすればと、黄泉は藁にも縋る想いで戦い続けていた。
だが黄泉は、僥倖とは思えなかった。異変がおどろおどろしい。その戸惑いが何かに影響するでもなく、神姫は立ち上がることを終えた。
その耳には、雑音混じりの唄声が聞こえていた。